【秋田クマ襲撃】それでも山に入る“採取者”たちの思い クマより恐ろしいものとは?

秋田県で痛ましいクマによる襲撃死亡事件が発生し、改めてクマの脅威が注目されています。しかし、そんな危険な山にも関わらず、山菜やキノコを求めて足を踏み入れる人々が後を絶ちません。一体なぜ彼らは、命の危険を冒してまで山に入っていくのでしょうか?今回は、秋田県で採取を行う老夫婦の言葉から、その背景にある事情や思いを探っていきます。

十和田湖周辺の深い森で生きる知恵

観光地として名高い十和田湖。その湖畔には美しいホテルが立ち並び、多くの観光客で賑わっています。しかし、一歩観光エリアを離れると、そこには未舗装の険しい林道が広がり、深い森へと続いています。

今回取材に応じてくれたのは、そんな林道で山葡萄の蔓を採取していた老夫婦。彼らは、クマに襲撃された男性の知人でもありました。

山の恵みは生活の糧

老夫婦が採取していた山葡萄の蔓は、高級な籠の材料となる貴重なものです。彼らは、この蔓を求めて、クマの危険が潜むブナの林へと分け入っていくのです。

老夫婦は山葡萄の蔓以外にも、漢方薬の材料となる朴の木の皮や、ワラビなどの山菜、フキやウドなども採取しています。特に力を入れているのがキノコで、天然舞茸が生える私有林の所有者と年間契約を結び、採取を行っています。

舞茸はキロ3000円程度と高値で取引され、シメジなどのキノコ類もキロ1000円程度で売れるため、彼らにとって貴重な収入源となっています。

クマよりも恐ろしいもの

老夫婦は、クマの危険性はもちろん認識していますが、それ以上に、生活のために山に入らざるを得ない現実があると語ります。年金収入だけでは生活が苦しく、山の恵みが貴重な収入源となっているのです。

また、彼らは、自分たちの採取場所を荒らす不法採取者の存在にも頭を悩ませています。所有者の許可を得て採取を行っている彼らにとって、ルールを守らない人々の存在は、クマ以上に厄介な問題なのかもしれません。

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自然と共存する難しさ

今回の取材を通して、クマの危険と隣り合わせで生きる人々の現実や、山の恵みが彼らの生活を支えているという事実を改めて認識させられました。

自然と共存することの難しさ、そして、自然の恵みによって生かされている人々の姿を、私たちは決して忘れてはならないでしょう。