石破政権は来年夏までもたない
10月27日に投開票が行われた衆議院選挙で、自民191議席、公明24議席と、与党が惨敗を喫したことは、ただでさえ弱かった石破茂首相(67)の政権基盤を根底から揺るがす事態となっている。
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「石破首相では来年夏の参議院選挙は戦えないという話は、当然、出てくると思う。特に、2000万円問題は本当に痛かった。選挙後半は相当、野党候補に追い込まれた。党内よりもまず、来月の首相指名選挙がどうなるか…」(非公認で当選した平沢勝栄元復興相)
今のところ、自民党内に「倒閣」の動きはないものの、選挙終盤、自民党が、非公認とした「裏金候補」の党支部に2000万円を支給した問題が明るみに出たことは、それを決裁した石破首相や森山裕幹事長(79)の責任問題として、今後、党内で大きなうねりになっていくのは間違いない。第一、野党の協力がなければ、11月11日ごろとみられる首相指名選挙で勝てない。予算も法案も通らない。
石破首相の周りには、小泉内閣での飯島功氏、安倍内閣での今井尚哉氏、そして岸田内閣での嶋田隆氏のような参謀的な秘書官はいない。「首相のために」と身を投げ打つような忠臣も不在だ。これでは「倒閣」の動きを防ぎきれまい。
最近で言えば、羽田内閣の64日、宇野内閣の69日という短命記録の更新は回避できたとしても、来年夏の東京都議会議員選挙や参議院選挙までもつかと聞かれれば、難しいと言うしかない。
失速するハリスの「なりふり構わぬ」戦い
こうした中、アメリカ大統領選挙の投開票日が、いよいよ11月5日(日本時間6日)に迫ってきた。結論から言えば、今、投開票すれば、ドナルド・トランプ氏(78)が再選される可能性が高い。
トランプ氏の再選は、カマラ・ハリス氏(60)の敗北を意味するが、そうなる可能性が高い最大の根拠は、黒人有権者や中南米系有権者の中にトランプ氏支持者が増えている点だ。
特に黒人有権者だ。ニューヨーク・タイムズ紙が10月12日に公表した世論調査によれば、黒人有権者のハリス氏への支持率は78%で、トランプ氏の15%を大きく上回っている。その後の他の世論調査でも、その傾向はあまり変わらない。
「それなら、ハリス氏が優勢なのでは?」と思うところだが、黒人初の大統領となったバラク・オバマ氏はもとより、2016年のヒラリー・クリントン氏、そして2020年のジョー・バイデン氏といった歴代の民主党候補は、黒人有権者の90%から支持を得ていた。つまり、ハリス氏への支持率78%という数字は低いのだ。
背景には、黒人有権者の多くが白人以上に物価高に苦しんでいて、現職の副大統領であるハリス氏への風当たりが強いことが挙げられる。
さらに言えば、黒人有権者には「強い男性の大統領」を望む傾向があり、英語で言う「ミソジニー」(misogyny=女性蔑視)の感情が根強い。
ハリス氏を応援するオバマ氏が、10月10日、激戦州の1つ、ペンシルベニアで、黒人有権者の動向に関して、「女性大統領に違和感があるのか」と苛立ちを露わにしたのも、思いのほか「ミソジニー」が強いという証左である。
事実、ハリス氏の選挙終盤での動静を見れば、「黒人有権者離れ」への焦りがはっきりと見てとれる。
10月14日、ハリス氏は、黒人を対象に、起業した場合の金融支援など新たな支援策を発表した。翌15日には、大麻の合法化や警察改革の推進を約束した。
また、20日には、自身の60歳の誕生日を、黒人有権者が全体の3割を占める激戦州ジョージアの、それも黒人教会で迎え、ミュージシャンのスティービー・ワンダーさんらとともに支持を呼びかけた。
さらに25日からは、ジョージアやミシガンといった激戦州で大集会を開き、テキサス州ヒューストンでの集会には、歌手のビヨンセさんらも参加して総力戦を展開してきた。27日には、ペンシルベニア州最大の都市、フィラデルフィアで、中南米プエルトリコの料理に舌鼓を打ち、31日には、同じく激戦州のアリゾナ、ネバダの2州で集会を行う予定だ。
一定の効果はあるかもしれないが、選挙の最終局面で公約を追加したり、特定の有権者層に媚びを売ったりする候補者は弱い。また、その「焦っている感」は、従来の民主党支持者にも悪い影響を与えかねない。