今年7月、浜松市の夜の街を震撼させたガールズバーでの殺傷事件から5ヶ月が経過した。両腕に刺青を入れた中年男がナイフを振り回し、女性従業員2人を刺殺したという悪夢のような一夜は、未だに人々の記憶に深く刻まれている。住所不定・無職の山下市郎容疑者(41)は殺人と銃刀法違反などの罪で起訴され、事件現場となったガールズバーは店名をそのままに営業を停止しているが、そこには今も亡くなった人々を悼む静かな祈りが捧げられている。
容疑者の家族も心労を抱えている様子
事件の概要と容疑者の起訴
事件は7月6日午前1時55分頃、浜松市中央区千歳町のガールズバーで発生した。山下容疑者は2本のククリナイフを両手に持ち店内に侵入し、店長の竹内朋香さん(当時27歳)と店員の伊藤凜さん(当時26歳)の背中を複数回刺し、失血死させた疑いが持たれている。通報で駆けつけた静岡県警浜松中央署員によって山下容疑者は殺人未遂の現行犯で逮捕され、その後容疑は殺人に切り替えられた。鑑定留置を経て、静岡地検浜松支部は11月14日、山下容疑者を殺人と銃刀法違反などの罪で起訴した。
容疑者の「本性」と執拗なつきまとい
集英社オンラインでは、常連客であった山下容疑者が被害者の一人である伊藤さんに執拗につきまとい、仕事や私生活で見せていた「本性」を詳細に報じてきた。彼は、初対面の若者には「喧嘩売ってんの?」とからむ一方で、年下の後輩には暴力を振るうなど、弱い者には強く、強い者には尻尾を振るという二面性を持っていたとされる。常連だったバーに伊藤さんを伴って訪れたこともあり、その異様な執着が明らかになっていた。
事件現場の現在と追悼の心
事件から5ヶ月が経ち、恐怖の現場となったガールズバーの店舗を訪れると、看板などはそのまま残されていたが、営業は行われていない様子だった。近隣の商店店主は、「事件以降、ずっと営業はされてないし、近所の人も最近は話題にすることはない。しかし、定期的に新しい花や飲み物が供えられているのを見ると、皆が忘れたわけではないのだろう」と語った。夜中に人影を見ることはなく、供え物は昼間にされている可能性が高いという。
別の商店店主は、訪れる人々の心境を察し、「元従業員の子や被害者のご遺族の方が定期的に訪れて供えているのだと思う。あのお店のママは姉御肌で面倒見が良かったから、若い子たちが頻繁に花を置いていっているよ。お店自体は休業したままだが、被害者のご遺族の方にも色々な思いがあるようで、家賃はそのまま払い続けられていると聞いている」と明かした。この言葉からは、亡くなった2人への深い哀悼の念が今も多くの人々の心に宿っていることが伺える。
周囲の反応と時間の経過
山下容疑者が伊藤さんを連れて訪れたこともあったという近隣のバーの女性店員は、当時の状況を振り返り「あの時は本当に大変でした。うちの店にもマスコミの方が連日何人も来ていましたから。本当にひどい事件でした」と述べた。しかし、マスコミの報道が減るにつれて、次第に事件を話題にする人もいなくなり、今では誰も口にしないという。「山下容疑者のボトルですか?さすがにもう廃棄してしまいましたよ」と、彼女は静かに付け加えた。時間の経過とともに日常が戻りつつある中でも、事件がもたらした傷跡は完全に消えることはない。
この痛ましい事件は、浜松の夜の街に深い影を落としたが、献花や供え物を通じて、今もなお犠牲者を悼む人々の心が続いている。法廷での裁きが進む一方で、社会に残された影響と、失われた命への追悼の思いは、静かに、しかし確かに受け継がれていくことだろう。





