ロシアの侵攻を受けるウクライナ政府は29日、約16万人の追加動員を実施する方針を明らかにした。ウクライナ東部ドネツク州で露軍が攻勢を強めているほか、北朝鮮が最大1万人の規模でロシアに派兵したことなどが影響しているとみられる。
現地メディア「ウクラインスカ・プラウダ」などによると、リトビネンコ国家安全保障国防会議書記が29日の最高会議(議会)で「これまでに105万人の国民を動員したが、さらに16万人を追加動員する」と述べた。動員は今後3カ月間に実施される見通し。
兵員不足に悩むウクライナ軍は昨年末以降、政府に最大50万人の追加動員を要求していた。政府は今年4月に徴兵対象年齢の下限を27歳から25歳に引き下げたほか、徴兵逃れの取り締まりを強化したが、国民の反発を招く恐れがある追加動員の実施には慎重だった。
だが、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻開始当初から従軍する兵士も多く、前線で兵士の疲弊が深刻化していた。
露軍はドネツク州で進軍を加速させており、タス通信は29日、露軍がセリドベ、ヒルニクなど同州の3都市を制圧したと報道した。露軍はさらにセリドベから北西に約16キロの要衝ポクロフスク制圧に向け、包囲網を狭めつつある。
ウクライナ軍のマルチェンコ少将は28日に公開された動画で、セリドベが陥落する見通しであることを認めたうえで、ドネツク州での露軍の攻勢の原因として自軍の弾薬、兵器不足に加え、人員不足、前線の兵士の疲弊、交代要員の欠如などを挙げた。また北朝鮮軍による派兵が進みつつあることも、追加動員の要因となったとみられる。
一方、現地メディア「キーウ・インディペンデント」によると、ゼレンスキー大統領は25日、ウクライナ軍の外国人部隊の兵士を将校に登用するための修正動員法案に署名した。ウクライナ当局によると、陸軍と国防省情報総局にはそれぞれ外国人部隊があり、米国やカナダ、英国、豪州など55カ国の兵士が参加しているという。【ブリュッセル宮川裕章】