■ ホワイトハウスでの会談後に発言
米国のドナルド・トランプ大統領は金曜日、ホワイトハウスでウクライナのゼレンスキー大統領と会談した後、
「ウクライナとロシアの双方が勝利を宣言し、あとは歴史に委ねるべきだ」と述べた。
発言はTruth Social上で行われ、「率直で実りある会談だった」と振り返った。
ゼレンスキー氏は会談後、米国が長距離兵器――特にトマホーク・ミサイルを提供するか否かについて、
「公開を控えることで、紛争の拡大を避ける」と説明した。
会談の数時間前、トランプ氏は「トマホークをウクライナ製ドローン(UAV)と交換する用意がある」と示唆していた。

■ ブダペストでの首脳会談へ
今回の会談は、トランプ氏が前日にロシアのプーチン大統領と電話会談を行い、
「ブダペストで直接会談する」と発表した翌日に実施された。
トランプ氏はゼレンスキー氏を同席させる可能性を残しつつも、
「それぞれ個別の会談になる可能性もある」と述べている。
トランプ氏は記者団の質問に対し、
「トマホークは重要な兵器だが、アメリカも自国防衛のために必要だ」と語り、
「しかし、平和は非常に近いところにある」と強調した。
「プーチンが時間稼ぎをしているのでは」と問われると、
「あり得るだろう。しかし私は人生で何度も老練な交渉人に試されてきたが、
そのたびに勝ってきた」と答えた。
■ 両国の反応と国際的文脈
ゼレンスキー氏はトランプ氏に対し、「中東での停戦を成功させたことを祝福する」と述べつつ、
「プーチンはまだ戦争を終わらせる準備ができていない」と指摘した。
一方、トランプ=プーチンの電話会談前日、ロシア軍はウクライナ各地への大規模攻撃を実施。
在米ウクライナ大使はこれを「モスクワの本心を示す行動」と非難し、
「トランプこそ唯一、戦争を終わらせることができる指導者だ」と評価した。
米露両国の国家安全保障担当補佐官は来週、マルコ・ルビオ国務長官の主導で会談し、
ブダペスト首脳会談の調整を進める予定だ。
■ 分析 「歴史に委ねる」発言が示すトランプ流交渉術
トランプ氏の発言「ウクライナとロシアが共に勝利を宣言し、歴史が裁く」は、
彼の交渉スタイルを端的に示している。
それは理想よりも結果を優先する実務的アプローチであり、
戦争を「双方の勝利」として終わらせることで、
アメリカを「戦争の支援者」ではなく「和平の仲介者」として再定義しようとするものだ。
トマホークとUAVの交換案は、ロシア側の反応を探りつつ主導権を握る試金石といえる。
もしブダペスト会談で進展があれば、欧州安全保障の秩序に大きな転換点をもたらす可能性がある。
しかし、この「歴史に委ねる」姿勢は、
ウクライナの「完全勝利」を目指す西側の強硬派にとって受け入れ難い。
戦争を理想ではなく取引で終わらせる――それがいわゆる**“トランプ・ドクトリン”**である。
熱心なウクライナ支持者の間では失望の声も上がっているが、
国際政治の現場では「結果を残す現実主義」が再び脚光を浴びつつある。
文責:南アキラ(政治アナリスト/JP24H.com)
出典:AP通信、Reuters、Washington Post、Truth Social、Axios(2025年10月18日)