オルドビス紀の海底に生息していた、4億5千万年前の未知の節足動物の化石が、ニューヨーク州で発見されました。まるで精巧な金の装飾品のようなこの化石は、古代生物の進化の謎を解き明かす鍵となるかもしれません。
輝く化石、その正体は?
今回発見された化石は、現代のカブトガニ、サソリ、クモの遠い親戚にあたる節足動物の一種です。エビにも少し似ているこの生物は、オルドビス紀(4億8500万年前~4億4400万年前)の海底に生息していました。生命が海から陸へと進出し始めたばかりの時代、この小さな生物はどのような生活を送っていたのでしょうか。
alt
この化石が金色に輝いているのは、黄鉄鉱の中で保存されていたためです。黄鉄鉱による化石化は非常に稀であり、今回の発見はまさに奇跡と言えるでしょう。化石はニューヨーク州中部のローム近郊、化石の宝庫として知られる地域で発見されました。この発見に関する論文は、2024年10月29日にカレント・バイオロジー誌に掲載されています。
黄鉄鉱が保存した太古の記憶
エディンバラ大学地質学部のスティーブ・ブルサッテ教授(今回の研究には不参加)は、この化石について「美術館級の美しさ」と絶賛しています。黄鉄鉱によって化石が保存されたおかげで、通常は腐敗してしまうような繊細な器官の構造まで詳細に観察できるのです。
ブルサッテ教授は、「通常、繊細な器官は化石化の過程で失われてしまいますが、この化石では黄鉄鉱がそれらを保護し、石に変えました」と説明しています。黄鉄鉱の高い密度のため、研究チームはCTスキャンを用いて化石の内部構造まで分析することができました。
alt
ロマンクス・エッジコムベイ:謎多き古代生物
今回発見された新種の節足動物は、「ロマンクス・エッジコムベイ」と名付けられました。これは節足動物の専門家であるグレッグ・エッジコーム氏にちなんだものです。ロマンクスは絶滅したメガケイラ類に属します。他のメガケイラ類は付属肢を使って獲物を捕らえますが、ロマンクスは目を持たず、付属肢で海底の堆積物を感知していたと考えられています。
オックスフォード大学准教授のルーク・パリー氏は、黄鉄鉱による化石化は過去5億年間でも数例しかない非常に珍しい現象だと指摘しています。パリー氏によると、ロマンクスの頭部の器官の配置は現代の節足動物と似ており、ロマンクスの付属肢は古代の昆虫の触角や、サソリ、クモの口器に相当する可能性があるとのことです。
進化の謎を解き明かす鍵
今回の発見は、節足動物の進化における付属肢の発達について新たな知見をもたらす可能性があります。古代生物の生態や進化の過程を理解する上で、貴重な手がかりとなるでしょう。今後の研究で、ロマンクス・エッジコムベイの生態や進化の過程がさらに明らかになることが期待されます。