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“部分的”と前置きをしながらもついに動員に踏み切ったプーチン大統領。さらに核使用についても、あえて“脅しではない”と念を押した。新たな局面に突入したウクライナ戦争。ゼレンスキー大統領最側近に単独インタビュー、専門家とともにその影響と今後を読み解いた。
【写真を見る】「ロシアを核攻撃するよう国際社会は宣言すべき」ゼレンスキー“最側近”に独自インタビュー【報道1930】
■「今回の動員は・・・脅威にはならない」
プーチン氏が“部分的動員”の大統領令に署名した。これにより30万人の予備役が招集され、おそらくはウクライナでの軍事行動に参加することになる。人員不足が伝えられるウクライナ前線のロシア軍にとって、この動員はどれくらいの効果があるのか、番組ではウクライナ側に話を聞いた。ゼレンスキー大統領の最側近の一人、ポドリャク大統領顧問だ。
ポドリャク大統領顧問
「始まった当初、ロシアは能力の高い部隊が多かったが、今はほとんど残っていない。今回動員されるホワイトカラーの人たちは十分な訓練を受ける時間もなければ適切な装備もないので脅威にはならない。(中略)それに国家に対する忠誠心が問題になる。彼らは30万人と決めているわけではなく、できるだけだけ動員したいので、50万人、100万人になる可能性もある。
皮肉ですが、ロシアの唯一の才能は数で勝負することです」
確かに、頭数ではロシアにはまだまだ兵士になりうる人間はいる。だが、突然戦場に連れていかれ、忠誠心もなければ満足な装備もない。さらに大きな問題を小谷哲男教授は指摘する。
明海大学 小谷哲男 教授
「戦闘に入る前には十分な訓練が必要で、そのためのシステムが必要です。訓練にはそのための将校が必要です。彼らの下で招集された人は色々教えてもらう。でも、その将校が全然足りていない。(中略)頭数にはなるでしょうが、大した戦力にはならないかと・・・」
今回の動員は、戦場では大きく影響しないというが、戦場ではなくロシア国内で、大きく影響している。
■「これは津波や地震のようなもの。ロシアの動員もまた自然災害なのです」
そもそも予備役とは、徴兵による兵役経験者の中で、自ら登録し定期的に軍事訓練を受けているものとされ、ロシア国内に約200万人いる。が、ショイグ国防相によれば、ロシアには軍務経験者、戦闘経験者、軍事専門性を持つ者が2500万人近くいて、部分的動員は“総動員”の1.1%に過ぎないとしている。動員数の小ささを強調することで国内の動揺を抑えようとした発言だ。
しかし、国内の動揺は動員発表直後から国民の行動に表れていた。ビザなしにロシア国外に飛べるトルコ行きなどの航空機はすでに満席。セルビアの空港でロシア人女性の話を聞いた。
ロシア人女性
「私があなたと話している映像を政府や警察も見ることができるので、私自身の安全が脅かされるのではないかと怖いです。でも言いたいです。“ウクライナに自由を”と。そして“だれかプーチンを止めて”と」
航空便の他にも、陸路で国外に脱出できる道路は、モンゴルへの道もジョージアへの道も大渋滞だ。また、モスクワなど38都市で動員反対のデモが行われ、すでに1400人以上が拘束されている。さらに、拘束された若者には、徴兵事務所に出頭する旨を伝える軍の召集令状いわゆる“赤紙”が渡されるという。もちろん召集を拒めば罰則がある。
こういった事態に、戦場に我が子を送り出す母親の代表は何を思うのだろうか、話を聞いた。
ロシア兵士『母の会』 メリニコワ会長
「警察官が招集の年齢に当たる45歳までの男性を道端で呼び止め、令状を渡していました。(中略)母親たちは皆さん心配しています。動員がウクライナの戦闘行為のためであることは明らかです。自分の息子や近しい人を送り出したい人はいません。多くの方から電話で質問がありました。動員されないためにはどうすればいいのか・・・。
(中略)ロシア兵士『母の会』が政治問題に対して回答することは危険です。私たちはいかなる政治的な色も出しません。大統領が動員令を決めたのです。どんな意見が有り得るでしょう。これは、台風や津波や地震のようなもの。ロシアの動員もまた自然災害なのです」
母の悲痛な叫びも、プーチン氏やロシア上層部には届かない。仮に届いたとして辞めるはずもない。それどころか、動員発令前日には、兵役に関する刑法の修正案が議会で可決している。
そこには「戦時・戒厳令・動員」の概念が新たに記され、徴兵忌避、軍事作戦への参加拒否などについて最長10年の刑罰など厳罰化が盛り込まれた。