イギリスで今、静かながらも熱い日本文学ブームが巻き起こっています。書店には村上春樹や柚木麻子をはじめ、多くの日本人作家の作品が並び、昨年イギリスで売れた翻訳小説の4分の1はなんと日本のものだったそうです。一体何がイギリスの読書家たちを惹きつけているのでしょうか?本記事では、その魅力を探るとともに、イギリスの読書文化についても触れていきます。
イギリスの根強い読書文化
ロンドン中心部の書店で日本の本を手に取る人
ロンドンでは、地下鉄で読書をする人が非常に多いです。Wi-Fiが繋がりにくいという事情もありますが、それ以上に、日常生活に読書が深く根付いていることが大きな理由と言えるでしょう。
夏になると、屋外に設置されたシャンパンバーやカフェに可動式の本棚が登場し、シェイクスピアやディケンズなどの名作を自由に手に取ることができます。地方の静かな場所にも「ブック&ワインバー」といったユニークなお店が存在し、ワインを片手に読書を楽しむことができます。
ワインを片手に読書が楽しめる店
図書館では古くなった蔵書が格安で提供され、街角では「お気に入りの本を交換しませんか?」といった看板を目にすることもあります。個性豊かな独立系書店も多く、オリジナルグッズはお土産にも人気です。こうした書店巡りを楽しむためのガイドブックも出版されているほど、イギリス人は読書好きと言えるでしょう。著名な書籍評論家である田中一郎氏も、「イギリスの読書文化は、日常生活に深く浸透しており、日本も見習うべき点が多い」と指摘しています。
Z世代の読書回帰と日本文学ブーム
書店に並ぶ日本の小説。なぜか“猫の表紙”が多い。
近年、Z世代と呼ばれる若者たちの間で紙の書籍や図書館への回帰が見られます。ガーディアン紙では「読書ってセクシー」という刺激的なタイトルの記事が掲載され、スーパーモデルのカイア・ガーバーが読書クラブを立ち上げるなど、読書が新たなトレンドとなっています。昨年、イギリスでは書籍の売り上げが過去最高を記録し、図書館の利用も増加しました。Z世代の書籍購入の多くは紙媒体で、特に少女期や女性の人生に関連するテーマが人気です。
そして、この読書ブームの波に乗り、日本文学も注目を集めています。Spectator誌では「日本の小説ブームの裏に何があるのか」という特集記事が組まれ、書店では柚木麻子さんの「BUTTER」が「Criminally Good(反則級に素晴らしい)」と絶賛されています。その他にも多くの日本人作家の作品が並んでおり、日本文学への関心の高さが伺えます。文化人類学者の山田花子氏によると、「日本の小説は、繊細な心理描写や独特の世界観が、イギリスの読者にとって新鮮で魅力的に映っているのではないか」と分析しています。
日本文学の魅力とは?
イギリスで日本文学が人気を集めている理由としては、以下のような点が挙げられます。
- 繊細な心理描写:登場人物の心情を丁寧に描き出すことで、読者の共感を呼び起こします。
- 独特の世界観:日本の文化や歴史、風土を背景にした物語は、異国情緒あふれる世界観を醸し出します。
- 洗練された文章:美しい日本語を巧みに翻訳することで、イギリスの読者にもその魅力が伝わります。
これらの要素が、イギリスの読書家たちを魅了し、日本文学ブームを支えていると言えるでしょう。