業務で知った企業の未公表情報を基にインサイダー取引をしたとして、金融商品取引法違反に問われた三井住友信託銀行元部長・片山肇被告(55)の初公判が22日、東京地裁(開発礼子裁判官)であり、被告は罪状認否で起訴事実を認めた。
起訴状では、片山被告は2022年12月~昨年8月、証券代行営業第二部の次長や部長として、業務で顧客企業の株式公開買い付け(TOB)情報3件を把握し、公表前に3銘柄の計2万5900株(約3210万円)を買い付けたとしている。
検察側は冒頭陳述で、片山被告は50歳を過ぎた頃、老後資金のために10年間で2000万円を貯蓄する目標を立て、これを達成するために社内規定に反して株取引を行っていたと指摘。顧客企業のTOB情報の報告を受ける同部次長に22年1月に昇進し、この立場を悪用して不正な取引に及んだと述べた。不正に得た利益は計約2930万円に上ったとも言及した。
この日は被告人質問も行われ、貯蓄目標を立てた理由を問われた片山被告は「役職定年の55歳を過ぎると給料が大きく下がるため、老後に不安を感じた」とし、違法性を認識しつつ目標達成のために不正を繰り返したと語った。
検察側の証拠調べなどによると、片山被告は昨年8月、不正に使ったTOB情報を知る社員の名簿を社内でまとめていることを把握。発覚の可能性があると考え、同10月に会社に不正を申告し、懲戒解雇された。