北朝鮮の党員証:その重みと市場経済の台頭

北朝鮮の労働党員証、それは単なる身分証明書ではなく、住民の生活、地位、そして未来を左右する重要な象徴です。今回は、東亜大学釜山ハナセンターのカン・ドンワン所長がYouTubeで公開した北朝鮮の党員証を基に、その価値と変わりゆく北朝鮮社会の実態に迫ります。

厳重に保管される党員証:その価値とは

カン・ドンワン所長が公開した党員証は、幾重にも保護されていました。小さな手編みのバッグの中に、赤いベルベットの布で幾重にも包まれ、さらに火災から守るための鉄製箱に収められています。驚くべきことに、この箱は党から支給されるのではなく、党員が自費で購入する必要があるそうです。まるで貴重な宝物を守るように、党員証は大切に保管されているのです。

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党員証を開くと、キム・イルソン主席の写真とともに、6桁の党員番号、氏名、入党年などが記載されています。党委員会責任者の署名、月々の党費納入状況を示す確認印も押されており、まさに公式文書としての重みを感じさせます。

変わりゆく党費:経済の逼迫を映す鏡

公開された党員証の持ち主は2010年まで党費を納めていましたが、その額は年々減少。2005年には月110ウォンだったものが、2010年には30ウォンまで落ち込んでいます。この党費の減少は、北朝鮮経済の逼迫を如実に表していると言えるでしょう。経済学者のキム・ヨンチョル氏(仮名)は、「党費の減少は、国家財政の悪化と住民の経済的困窮を示唆している」と指摘しています。

党員資格のハードル:変わりゆく社会構造

かつては軍務を終えれば自動的に党員資格が得られましたが、現在では推薦書が必要となり、取得は困難になっています。男性の場合、10年間の軍務や青年突撃隊での活動が必須条件とされ、厳しい選抜を経なければ党員になれない層も存在します。

市場経済の台頭:党と市場のパワーバランス

近年、北朝鮮では「党」と並んで「市場」の重要性が増しています。カン・ドンワン所長は「北朝鮮住民を支えているのは党ではなく市場である」と述べています。党員証を持つことは中上流階級「基本群衆」に属する証とされ、生活水準や物資供給に大きな差が生じますが、市場経済の浸透により、党員資格の持つ意味も変化しつつあるのかもしれません。

党員証:変わりゆく北朝鮮社会の縮図

党員証は、北朝鮮社会の縮図と言えるでしょう。厳重な管理体制、経済の逼迫、変わりゆく社会構造。これらの要素が複雑に絡み合い、北朝鮮の現状を浮き彫りにしています。今後の北朝鮮社会がどのように変化していくのか、引き続き注目していく必要があります。