元兵庫県議に対する名誉毀損で起訴された「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志被告が12月24日、兵庫県警の留置施設から神戸拘置所(神戸市北区)に移送されたことが明らかになった。この拘置所は、過去に収容中の被告が凍死した事例もあり、「冬の厳しい寒さ」で悪名高い施設として知られている。この時期の移送が、立花被告にどのような影響を与えるのか、注目が集まっている。
名誉毀損で起訴された立花孝志被告の顔写真
神戸拘置所への移送と過酷な寒さの実態
立花孝志被告が移送された神戸拘置所は、刑事被告人や死刑囚を収容する全国8カ所の本所の1つである。神戸市の山間部に位置し、周囲には閑静な住宅街が広がっている。記者が訪れた際には、高台からの神戸港の絶景が見事であったが、その美しい環境とは裏腹に、内部は過酷な寒さで知られている。数年前の冬に同拘置所に数カ月間収容された経験を持つAさんは、「まあ、えらい時期に移送されたわな。地獄を見るんじゃないですか」と、立花被告の置かれた状況について語った。
比較される拘置施設の環境:奈良少年刑務所との対比
Aさんはこれまでに全国10カ所ほどの拘置所や刑務所に収容された経験があり、その中で最も古い施設として1908年(明治41年)に建てられた奈良少年刑務所(前身は奈良監獄)を挙げた。同施設は建築家・山下啓次郎氏が設計した和洋折衷のモダンな造りで、2017年の閉鎖後には重要文化財に指定され、2026年春にはミュージアムとして活用される予定だ。
重要文化財に指定された旧奈良監獄の歴史的建造物
一方、神戸拘置所は1978年(昭和53年)に現在の場所に移転し、比較的施設は充実しているとされている。しかし、Aさんはこれら二つの施設を比較し、神戸拘置所の寒さの厳しさを強調した。「奈良少年刑務所は明治の建物なので、窓からすきま風は入ってきますが、風がほとんどない。意外と寒くなかった」と振り返る。これに対し、山中にある神戸拘置所は風が強く気温も低いため、「布団が冷たくてどうしようもない。冬場は午後5時くらいから布団に入ることを許可されましたが、体温で布団が暖かくなって眠りにつけるのは夜の9時、10時だった」と、その過酷さを語っている。
拘置所生活の厳しさと自殺防止策
拘置所特有の厳しいルールも、寒さの中での生活に拍車をかける。Aさんによると、「寒いので、頭から布団をかぶろうとするじゃないですか。すると即座に刑務官から、『こら、頭、出しとけ』と叱責を受けます」という。これは自殺防止の観点から全国の拘置所や刑務所で共通のルールだが、Aさんは「北陸の刑務所でも受刑しましたが、頭から布団に飛び込みたいと心底思ったのは、神戸だけ。それほど神戸の寒さはつらかった」と、神戸の寒さがいかに精神的・肉体的に堪えるものであったかを明かした。
過去の悲劇:神戸拘置所での凍死事件
神戸拘置所では、実際に過去に悲劇が起きている。2006年には、当時29歳の男性被告が収容中に死亡する事件が発生。遺族の訴えを受けた神戸地裁は、その死因が凍死であったと認定する判決を下した。亡くなった男性は日記に「寒さで体が動かない」と書き残しており、死亡前日には医師から「指の一部が凍傷化」と診断されていたという。この過去の事件は、神戸拘置所の寒さがいかに生命に関わる問題であるかを物語っている。
立花孝志被告が移送されたこの時期、特に冬の神戸拘置所における過酷な環境は、収容される人々の心身に大きな負担を与えることが予想される。過去の凍死事件も踏まえ、同施設の環境に対する懸念の声が高まることは避けられないだろう。





