米国大統領選挙の投開票日が5日に迫り、全米、特に激戦州では、開票所周辺の警備が強化され、異様な緊張感が漂っています。2020年の大統領選後、トランプ前大統領支持者による連邦議会襲撃事件の記憶も新しく、選挙結果への不満から再び暴動や混乱が発生するのでは、との懸念が根強く残っているためです。
物々しい警備体制:有刺鉄線と警官隊
ペンシルベニア州フィラデルフィアでは、投票所や開票所周辺に多数の警官が配置され、厳戒態勢が敷かれています。州当局によると、地元警察に加え、約5000人の州警察官が各投票所に派遣されているとのことです。フィラデルフィア近郊のある開票所では、出入り口に警察車両が待機し、建物周辺は有刺鉄線のフェンスで囲まれています。警備担当者は「登録者以外の立ち入りは厳しく制限し、身元確認を徹底している」と述べ、万全のセキュリティ体制を強調しました。
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首都ワシントンD.C.でも、ホワイトハウス、連邦議会議事堂、ハリス副大統領の公邸などが鉄柵で封鎖されています。複数のメディアによると、ウィスコンシン州やノースカロライナ州など、少なくとも10州で州兵が開票所などに派遣されているとのことです。アリゾナ州では、州幹部が襲撃に備え、防弾チョッキを着用しているという情報も入っています。
市民の不安:再び混乱が起きるのでは?
2020年の大統領選では、バイデン氏が勝利しましたが、トランプ前大統領は選挙結果を認めず、「不正があった」と主張し続けました。そして2021年1月6日、バイデン氏の当選を正式に確定させるための議会手続きが行われていた連邦議会に、トランプ支持者が乱入し、議事堂を占拠するという前代未聞の事件が発生しました。
ワシントン・ポスト紙が激戦州の有権者を対象に行った世論調査によると、トランプ氏が敗北した場合、支持者による暴力行為が「心配だ」と回答した人は57%に上りました。ハリス氏が敗北した場合でも、その割合は31%に達しています。前回の大統領選後の混乱を経験した市民の間では、再び同様の事態が発生するのではないかという不安が広がっています。
ミシガン州イーストランシングで行われたハリス氏の集会に参加したトレイシー・メイソンさん(49)は、「トランプ氏が負けたら、2021年の議会襲撃事件と同じようなことが、より組織的に起きるのでは」と不安を口にしました。一方で、グランドラピッズで行われたトランプ氏の集会に参加した大学生のバート・ジムさん(18)は、「どちらが勝っても、怒りが収まらない人が出てくるだろう」と語り、米国の分断を嘆きました。
外国勢力による介入の可能性も
国家情報長官室とFBIは共同声明を発表し、今後数週間、激戦州において、国民の分断や暴力を扇動する外国勢力による偽情報キャンペーンが活発化する可能性があると警告しました。選挙結果への信頼を揺るがし、社会不安を煽るための情報工作が懸念されています。
専門家の見解
政治アナリストの山田一郎氏(仮名)は、「今回の選挙は、単なる政権交代だけでなく、米国の民主主義の試金石となるだろう。選挙結果が平和裏に受け入れられるか、それとも再び混乱と分裂に陥るか、世界が固唾を飲んで見守っている」と述べています。
まとめ
今回の大統領選挙は、厳戒態勢の中で行われます。選挙結果への不満から生じる混乱や暴力への懸念が高まる中、市民の不安は募っています。平和的な選挙の実施と、結果の円滑な受け入れが強く望まれています。