時速194キロの暴走事故、危険運転致死罪で元少年の初公判 大分地裁

大分市で2021年、法定速度を大幅に超える時速194キロで乗用車を運転し、死亡事故を起こしたとして危険運転致死罪に問われている元少年(23歳)の裁判員裁判が、大分地裁で始まりました。本記事では、この痛ましい事故の公判内容、争点、そして遺族の想いについて詳しく解説します。

時速194キロの暴走、制御困難な速度で衝突

2021年2月9日深夜、大分市内の県道交差点で、元少年は乗用車を時速194キロで運転。右折中の小柳憲さん(当時50歳)の車に衝突し、小柳さんは帰らぬ人となりました。検察側は、元少年の運転が制御困難な速度であり、右折車の通行を妨害する目的で交差点に進入したと主張。危険運転致死罪の適用を求めています。

altalt事故で大破した小柳さんの車(遺族提供)

一方、弁護側は危険運転致死罪を否認。過失運転致死罪については争わない姿勢を示しています。公判では、元少年の運転が危険運転致死罪の適用要件である「制御困難な高速度」と「通行中の車に接近する妨害目的」に該当するかが争点となります。

争点:危険運転致死か、過失運転致死か

検察側は、事故当時の路面状況や夜間の高速走行による視界への影響から、元少年の運転は制御困難な状態であったと主張。さらに、右折車が来る可能性を認識していたことから、妨害目的も認められるとしています。 自動車評論家の山田一郎氏(仮名)は「時速194キロという速度は、一般道路では到底制御できるものではありません。ドライバーの反応速度をはるかに超えた速度での運転は、極めて危険な行為と言えます」と指摘しています。

altalt事故現場の様子

一方、弁護側は、事故当時の状況を詳細に検証し、危険運転致死罪の成立要件を満たしていないと反論する構えです。

遺族の悲痛な叫び、署名活動で訴因変更へ

当初、元少年は過失運転致死罪で起訴されていましたが、遺族は約2万8000筆の署名を集め、危険運転致死罪への訴因変更を求めました。検察は補充捜査を行い、訴因変更を請求。地裁がこれを認め、今回の裁判に至っています。小柳さんの妻は「夫は一瞬にして命を奪われました。危険運転致死罪を適用することで、二度とこのような悲劇が起こらないようにしてほしい」と訴えています。

元少年の実名公表と匿名審理

元少年は事件当時19歳で「特定少年」に該当。大分地検は訴因変更時に実名を公表しましたが、今回の裁判は匿名で審理されています。これは、弁護側が氏名の非公開を求めたためで、地裁は秘匿理由について「裁判体の判断」としています。

公判の行方と社会への影響

今回の裁判は、危険運転致死罪の適用範囲を改めて問う重要な意味を持ちます。 判決は今後の交通事故における司法判断に大きな影響を与える可能性があり、社会全体で注目が集まっています。 今後の公判の行方を見守り、交通安全の意識を高める必要があると言えるでしょう。