インド、石炭火力発電所の脱硫装置義務化を見直しへ 微粒子対策を優先

インド政府が、国内の石炭火力発電所に脱硫装置の設置を義務付ける計画の見直しを進めていることが明らかになりました。ロイター通信が入手した政府文書によると、大気汚染緩和への効果が限定的であることが、政府支援の研究調査で判明したためです。深刻な大気汚染に悩むインドですが、その対策は大きな転換期を迎えていると言えるでしょう。

脱硫装置義務化の現状と課題

これまでインド政府は、国内約540箇所の石炭火力発電所に対し、2026年までに排煙脱硫装置(FGD)の設置を義務付ける計画を進めてきました。FGDは大気中に放出される二酸化硫黄を削減する装置ですが、高額な導入費用や技術的な課題から、設置完了率はわずか8%程度にとどまっています。

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ニューデリーの石炭火力発電所。煙突から排出される煙は大気汚染の一因となっている。(2017年7月撮影)

微粒子対策へのシフト

政府はFGDに代わり、国産の電気集塵装置の導入を提案しています。この装置は排煙から微粒子を除去するもので、設置費用はFGDの5分の1程度とされています。政府関係者や専門家の間では、インドの石炭に含まれる硫黄分は比較的低く、健康被害をもたらす微粒子対策を優先すべきだという意見が高まっているようです。

専門家の見解

大気汚染問題に詳しい環境コンサルタントの田中一郎氏(仮名)は、「インドの大気汚染の主因は、PM2.5などの微粒子であり、二酸化硫黄の削減だけでは十分な効果が期待できない」と指摘しています。「微粒子対策に重点を置くことで、より効果的に大気汚染を改善できる可能性がある」と田中氏は強調します。

国産技術への期待

国産の電気集塵装置は、導入コストの低減だけでなく、メンテナンスの容易さや技術的な自立性といったメリットも期待されています。政府は、国産技術の育成を支援することで、大気汚染対策と経済成長の両立を目指していると言えるでしょう。

今後の展望

インド政府の政策転換は、大気汚染対策における新たなアプローチと言えるでしょう。微粒子対策へのシフトは、国民の健康を守る上で重要な一歩となる可能性を秘めています. 今後の動向に注目が集まります。

まとめ

インド政府は、石炭火力発電所の脱硫装置義務化を見直し、微粒子対策に重点を置く方針へと転換しようとしています。高額な脱硫装置の導入よりも、より効果的で低コストな国産の電気集塵装置の導入が進むことで、大気汚染の改善に繋がるか、今後の展開が注目されます。