地方創生交付金:コンサル依存の現実と課題

地方創生は、日本社会の喫緊の課題である人口減少と東京一極集中への対策として、2014年に開始されました。石破茂首相は地方創生交付金の倍増を掲げ、地方への更なる投資を約束しました。しかし、この交付金制度には、地方自治体のコンサルタント依存という問題点が潜んでいます。

地方創生交付金とは?そのメリットと課題

地方創生交付金は、地方自治体が独自の計画に基づいて地域活性化事業を行うための財源として、国から交付されるものです。交付金のメリットは、地方の自主性を尊重し、地域の実情に合わせた柔軟な事業展開を可能にする点にあります。

しかし、片山さつき元地方創生担当大臣は、この交付金制度について、自治体が国の定めたメニュー以外の事業に取り組まなくなり、申請に必要な事業計画書の作成をコンサルタントに依頼するケースが増えていると指摘しています。

alt 地方創生交付金のイメージ図alt 地方創生交付金のイメージ図

なぜコンサルタント依存が起こるのか?

地方自治体のコンサルタント依存には、いくつかの要因が考えられます。第一に、申請書類の作成が複雑化していることが挙げられます。国が求める書類は高度な専門知識を必要とするものが多く、自治体職員だけでは対応が難しいケースが増えています。

第二に、自治体職員の減少です。「平成の大合併」以降、市町村の職員数は大幅に削減されており、人材不足の中で複雑な申請書類を作成することは困難となっています。都市計画学が専門の中山徹教授(奈良女子大学)は、行政改革による職員削減がコンサルタント依存の背景にあると指摘しています。

専門家の見解

中山教授は、1970年代には自治体が大学に計画策定を委託していたが、2000年以降、都市再開発関連の交付金・補助金制度の増加や地方創生事業の開始に伴い、国の求める書類のハードルが上がり、大学でも対応が難しくなったと述べています。地方分権一括法の理念とは裏腹に、地方創生交付金やデジタル田園都市国家構想交付金は、国が定めたマニュアルに沿った申請書作成が求められており、ノウハウのない自治体はコンサルタントに頼らざるを得ない状況です。

alt 石破茂首相の若い頃の写真alt 石破茂首相の若い頃の写真

今後の方向性

コンサルタント依存を解消し、地方創生交付金を真に地方活性化につなげるためには、申請手続きの簡素化や自治体職員の能力向上、そして国と地方の役割分担の明確化が不可欠です。地方創生は、地域独自の強みを活かした自立的な発展を目指すべきであり、その実現に向けて、関係者一体となった取り組みが求められています。

地方創生交付金の効果的な活用は、日本の未来を左右する重要な課題です。より良い制度設計と運用に向けて、国民一人ひとりが関心を持ち、議論を深めていくことが重要です。