ハリウッドの歴史には、巨額の製作費を投じながらも興行的に大失敗に終わり、製作会社を窮地に陥れた作品が存在します。今回は、そんな映画史に残る「失敗作」の一つ、「天国の門」(Heaven’s Gate) を深く掘り下げ、その魅力と悲劇の顛末に迫ります。
製作の背景と壮大なスケール
「天国の門」は、1980年に公開されたアメリカ映画。監督は「ディア・ハンター」でアカデミー監督賞を受賞したマイケル・チミノ。1890年代のワイオミング州を舞台に、ロシア・東欧系移民の悲劇と、アメリカ史の恥部と言われた「ジョンソン郡戦争」をモチーフにした西部劇です。
巨額の製作費と度重なるトラブル
当初1100万ドルの予算だった製作費は、チミノ監督のこだわりによって大幅に膨れ上がりました。「馬が通れない」という理由でセットを改築したり、本物の機関車を調達したり、エキストラを大量に増員したりと、妥協を許さない姿勢が予算を圧迫。さらに、度重なる撮り直しも製作費の増大に拍車をかけました。最終的に、製作費は4400万ドルという巨額に達しました。
alt="天国の門のワンシーン:西部劇らしい風景"
興行的大失敗と製作会社の倒産危機
5時間30分という長尺だった作品は、配給会社のユナイテッド・アーティスツの要請で219分に短縮されました。しかし、それでも興行的には大失敗。巨額の製作費を回収できず、ユナイテッド・アーティスツは倒産の危機に瀕しました。この作品は「映画災害」として語り継がれることになります。
再編集と再評価の兆し
あまりの不評に、さらに149分に短縮されたバージョンも作られました。しかし、近年になって、作品の壮大なスケールや映像美、そしてチミノ監督の作家性が見直され、再評価の動きも出ています。2012年には、216分のディレクターズカット版が公開されました。
キャストと物語の深層
主演はクリス・クリストファーソンとクリストファー・ウォーケン、イザベル・ユペールといった実力派俳優陣。保安官エイブリル(クリス・クリストファーソン)と牧場主アーヴァイン(ジョン・ハート)の友情、そして移民農民をめぐる争いを描いた物語は、社会的なメッセージ性も孕んでいます。
映画評論家 山田太郎氏のコメント(架空)
「『天国の門』は、興行的には失敗作とされていますが、チミノ監督の映画に対する情熱と妥協のない姿勢が凝縮された作品です。当時の映画製作の常識を覆すようなスケールと映像美は、現代においても見る者を圧倒する力を持っています。」
チミノ監督のその後
「天国の門」の失敗は、チミノ監督のキャリアに大きな影を落としました。5年後の1985年に「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」で監督復帰を果たしますが、以降の作品は興行的に成功せず、2016年にこの世を去りました。
「天国の門」は、映画史における一つの教訓として、そして映画という芸術の奥深さを示す作品として、今もなお語り継がれています。
まとめ:映画史に残る「天国の門」の光と影
「天国の門」は、興行的には大失敗に終わりましたが、その壮大なスケールと映像美、そしてチミノ監督の情熱は、今もなお多くの映画ファンを魅了しています。巨額の製作費と悲劇的な結末は、映画製作におけるリスクと成功の難しさを改めて私たちに教えてくれます。
皆さんも、一度この作品に触れてみてはいかがでしょうか。そして、映画史に残るこの「失敗作」の魅力を、ご自身の目で確かめてみてください。