中国経済の足かせとなっている地方政府の「隠れ債務」問題。全人代常務委員会は、6兆元(約117兆円)規模の対策を承認しました。しかし、市場の反応は冷ややかで、更なる対策への期待と不安が交錯しています。この記事では、今回の対策の内容と専門家の見解、そして今後の中国経済への影響について詳しく解説します。
隠れ債務とは?その深刻な実態
地方政府の「隠れ債務」とは、地方政府傘下の融資平台(LGFV)を通じて調達された、公式統計には含まれない債務のことです。インフラ投資などに充当されてきましたが、その規模は膨大で、経済のシステミックリスクとなっています。藍仏安財政相は、2023年末時点で14兆3000億元(約280兆円)に上ると明らかにしました。
中国地方政府の隠れ債務問題に関するイメージ画像
6兆元規模の対策、その中身とは
今回承認された対策は、地方政府の債務上限を今後3年間で6兆元引き上げ、簿外債務と交換することを認めるものです。さらに、既に承認済みの4兆元の発行も5年間で債務交換に充てることができます。これにより、地方政府の金利負担は5年で6000億元軽減されると見込まれています。
専門家の見解は厳しい
しかし、市場の反応は芳しくありません。上海安放私募基金の調査ディレクター、Huang Xuefeng氏は「予想を超える内容はない」と指摘。新たなワークフローを生み出さず、成長を直接支援するものではないと述べています。UBPのアジア担当シニアエコノミストも、必要なのは本質的な措置であり、市場は失望するだろうと厳しい見解を示しました。
今後の中国経済への影響は?
藍財政相は、公的部門による売れ残り集合住宅の購入や未開発住宅用地の取得、大手国有銀行への資本注入などの施策も打ち出すと表明しました。しかし、具体的な規模や時期は明らかにされていません。
ANZのストラテジストは、直接的な財政刺激策がなかったことについて、当局がトランプ次期米政権の方針を見極めている可能性を指摘しています。UBPのエコノミストも、消費を直接対象とした財政刺激策の実現には一段の痛みが必要だとし、トランプ大統領の方針が明らかになるまで様子見するだろうとの見方を示しました。
更なる対策への期待と不安
今回の対策は、地方政府の債務問題解決に向けた第一歩と言えるでしょう。しかし、市場の期待には及ばず、更なる対策への期待と不安が交錯しています。中国経済の先行きは不透明感が増しており、今後の動向に注目が集まります。