近年、韓国では45歳定年退職が話題となっています。業績不振や年功序列賃金構造といった要因が背景にあり、日本にとっても決して他人事ではありません。この記事では、韓国の現状を踏まえながら、日本における45歳定年退職の可能性や課題、そして対策について考えていきます。
韓国で広がる45歳定年退職の現状
韓国では、POSCOやKTといった大企業が希望退職を募り、45歳定年が現実味を帯びています。背景には、景気低迷による業績悪化に加え、年功序列賃金構造という構造的な問題が挙げられます。OECDのデータによると、韓国は勤続年数による賃金上昇率が主要国の中で最も高く、企業にとって40~50代社員の人件費は大きな負担となっています。
韓国の企業における希望退職の募集
ある大企業の人事担当役員は、「高費用・逆ピラミッド型の人材構造では、変化の激しい事業環境に対応するのは難しい」と指摘しています。韓国開発研究院(KDI)のハン・ヨセプ研究委員も、年功序列賃金が早期退職を誘導する要因になっていると分析しています。
45歳定年、日本への影響は?
日本でも、少子高齢化や経済の低迷が進む中、企業の業績悪化は避けられない状況です。韓国と同様に年功序列賃金制度を導入している企業も多く、45歳定年が日本にも波及する可能性は否定できません。
高年齢者の再就職の難しさ
45歳で退職した場合、再就職は容易ではありません。仮に再就職できたとしても、賃金や待遇が大幅にダウンするケースが少なくありません。中高年向けの求人不足も深刻な問題です。京畿道の雇用支援センター関係者は、「事務職経験者が生産職に転職するのは容易ではなく、希望賃金と企業側の提示額に大きな差がある」と指摘しています。
再就職支援センターの様子
労働研究院のキム・スンテク選任研究委員は、「40~50代の非自発的失業者は、労働市場で不利な立場に置かれ、定年前に労働市場から離脱する可能性が高い」と警鐘を鳴らしています。
45歳定年への対策
45歳は、まだまだ働き盛りです。韓国行政安全部によると、韓国の住民登録人口の中位年齢は今年末に45歳を超える見通しです。1997年の通貨危機当時の中位年齢は30.3歳であり、45歳定年という概念自体が時代遅れになりつつあります。
社会全体での取り組みが必要
韓国保健社会研究院のイ・アヨン研究委員は、「産業構造の変化が速く、40~50代の再就職が難しくなっている」と指摘し、個人ではなく社会全体で対策を講じる必要があると訴えています。具体的には、再就職支援の強化や、退職後の生活を保障するための制度設計などが求められます。
45歳定年は他人事ではない
45歳定年は、韓国だけの問題ではありません。日本でも同様の事態が発生する可能性は十分に考えられます。企業は、人材育成や働き方改革に取り組み、従業員が長く活躍できる環境を整備する必要があります。また、政府も再就職支援や社会保障制度の充実を図るなど、社会全体でこの問題に取り組む必要があります。
45歳定年という厳しい現実に直面しないためにも、今から準備を始めましょう。