元経営者である29歳の福谷さんが、愛車での車上生活を始めてから半年。かつては写真や映像の仕事に携わり、複数の飲食店も経営していたという彼の人生は、一体なぜこのような転機を迎えたのか。この記事では、福谷さんの過酷な現状と、将来への不安に迫ります。
突然の転落、そして車上生活へ
清潔感のある服装で取材に応じた福谷さん。街ですれ違っても、彼が車上生活者とは誰も想像できないでしょう。しかし、彼は家も仕事もなく、真夏の炎天下、車の中で寝泊まりする日々を送っています。
「公園やコンビニ、立体駐車場などを転々としながら、なるべく同じ場所に長居しないようにしています。山梨の夏は日中38~39度にもなり、2回ほど熱中症になりかけたこともありました。」
alt=山梨県で車上生活を送る福谷さん
削られる心、募る不安
車上生活では、自炊はせず、カップラーメンやコンビニ弁当などで食事を済ませています。食費を抑えるため、スーパーの値引き弁当を狙うことも。
「夕方になると、イオン系のスーパーで弁当が半額になるんです。200円くらいで買えるので助かります。でも、栄養バランスは偏りがちですし、温かいご飯が食べたいという思いは常にあります。」
alt=福谷さんの車内とわずかな所持品
限られた所持品の中で、唯一社会との繋がりを保っているのはスマートフォン。情報収集や暇つぶしにもなりますが、同時に精神的な負担も大きいと福谷さんは語ります。
「スマートフォンが唯一の連絡手段なので、常に見ています。何もすることがないというより、精神的に何もできないという感覚です。一日中寝て過ごすことも多いです。」
入浴はインターネットカフェ、洗濯はコインランドリーを利用。生活費は、以前の事業で得た貯蓄を切り崩している状態です。
「今は全ての口座とカードが止まっていて、手持ちの現金で生活しています。車上生活はランニングコストがほとんどかからないのが救いですが、もうすぐ車検が切れます。その後どうするかは、まだ分かりません。」
元経営者の苦悩、そして未来への希望
生活保護の申請も検討しているという福谷さん。支援団体に相談するも、なかなか状況は好転しないようです。「生活保護の申請はハードルが高いと感じています。支援団体にも相談しましたが、具体的な解決策は見つかっていません。」と不安を吐露しました。
フードバンクの存在は知っているものの、利用には抵抗があるとのこと。プライドが邪魔をしている部分もあるのかもしれません。「フードバンクのことは知っていますが、なかなか利用する勇気が出ません。」
今後の見通しは不透明ですが、福谷さんは前向きに生きようとしています。
「まずは生活を安定させ、仕事を探したいと思っています。以前の経験を活かせる仕事があればと思っていますが、今はどんな仕事でも挑戦する覚悟です。」
厳しい現実の先へ
福谷さんのような車上生活者は、社会の影で静かに増加しています。彼らの多くは、様々な事情を抱え、厳しい生活を強いられています。福谷さんの現状を通して、車上生活の実態、そして社会の課題を考えるきっかけになれば幸いです。