日本では、親と同居する未婚者、いわゆる「パラサイトシングル」が増加しています。この社会現象は、若者の経済的な不安定さや社会通念、そして自立を阻む様々な要因が複雑に絡み合っていると考えられます。本記事では、パラサイトシングル増加の背景にある問題点を探り、若者が自立し、恋愛や結婚といった人生の転機に前向きに向き合えるような支援のあり方について考えていきます。
パラサイトシングルとは?その現状と課題
「パラサイトシングル」という言葉は、中央大学の山田昌弘教授が1997年に提唱しました。2019年の時点で、20~50代の未婚者のおよそ7割、約1430万人が親と同居しており、1980年と比較すると約3倍に増加しています。特に、団塊ジュニア世代を中心とした壮年期のパラサイトシングルの増加は、社会的な課題として認識されています。
alt パラサイトシングルに関するイメージ画像。若者が自宅でくつろいでいる様子
山田教授は、「困窮する若者を支えるのは家族、特に親である」という社会通念がパラサイトシングル増加の根底にあると指摘しています。実際、非正規雇用の若者ほど親と同居する割合が高く、正規雇用と非正規雇用の格差が顕著に表れています。「第16回出生動向基本調査」によると、18~34歳の男性の場合、正規雇用で親と同居する割合は6割強ですが、非正規雇用では8割弱に達します。女性も同様に、正規雇用では7割弱、非正規雇用では8割弱となっています。
世界的な現象?アメリカ、韓国の事例
パラサイトシングルの増加は、日本に限った現象ではありません。アメリカでは、2001年の同時多発テロ以降、親と同居する未婚者が増加傾向にあります。かつては大学進学を機に実家を離れるのが一般的でしたが、テロ以降は親元に留まる、あるいは一度独立した後も実家に戻る「ブーメラン世代」が増加しています。また、「ヘリコプターペアレント」と呼ばれる、過干渉な親の存在も問題視されています。
韓国でも、1990年代後半と2008~2009年の通貨危機を契機に、「カンガルー族」(日本のパラサイトシングルとほぼ同義)という言葉が広く知られるようになりました。韓国のニュースチャンネル「YTN」の報道によれば、1985年から2010年までの25年間で、25歳以上の未婚男女が親と同居する世帯が約3倍に増加したとされています。
若者の自立支援に向けて
パラサイトシングル増加の背景には、経済的な不安定さだけでなく、社会通念や親の過干渉など、様々な要因が絡み合っています。若者が自立し、自分らしい人生を歩むためには、社会全体で支援していく必要があります。例えば、キャリアカウンセリングや就労支援、住居支援など、多角的なアプローチが求められます。
専門家の意見
家族問題に詳しいA大学B教授は、「若者の自立を促すためには、経済的な支援だけでなく、精神的なサポートも重要です。親世代とのコミュニケーションを円滑にするためのセミナーや、地域社会との繋がりを強化する取り組みも必要でしょう」と述べています。
若者が安心して自立できる社会の実現に向けて、私たち一人ひとりができることを考えていく必要があるのではないでしょうか。