選択的夫婦別姓:札幌のカップルが「ペーパー離婚」を経て、法廷闘争へ

結婚という人生の大きな節目に、名字を変えることで大切なパートナーとの間に深い溝ができてしまう…そんな現実を、札幌市在住の西清孝さん(32)と佐藤万奈さん(37)は身をもって経験しました。この記事では、お二人の「ペーパー離婚」の経緯、そして選択的夫婦別姓を求めて国を提訴するに至った道のりをご紹介します。

結婚という名の選択:名字を変えたくないという思い

医療専門職として同じ病院で出会い、恋に落ちたお二人。結婚の話が持ち上がった時、佐藤さんはある不安を抱えていました。それは、結婚に伴う改姓です。「佐藤」という名字に愛着があり、それを失うことに抵抗を感じていたのです。事実婚という選択肢も考え、西さんにその思いを伝えました。しかし、当時の西さんは佐藤さんの葛藤を深く理解できず、最終的には佐藤さんが「西」姓を名乗る形で婚姻届を提出しました。

altalt西清孝さん(左)と佐藤万奈さん。選択的夫婦別姓を求め、国を提訴した。

名字が変わってからの苦悩:適応障害と退職

職場での旧姓使用が認められず、「佐藤」という名前が徐々に消えていく中、佐藤さんは精神的な苦痛を抱えるようになりました。上司からの心ない言葉、同僚からの戸惑いの視線…。ストレスは次第に増し、適応障害と診断され、10年以上勤めた職場を退職せざるを得なくなりました。そして、佐藤さんから西さんへ向けられた言葉は「恨んでるよ」でした。

ペーパー離婚:そして選択的夫婦別姓への意識の変化

この言葉で、西さんは初めて佐藤さんの苦しみに真摯に向き合うことになります。すぐに事実婚に戻すことを決意し、「ペーパー離婚」という選択をしました。その後、西さんは選択的夫婦別姓について深く学び、佐藤さんと共に「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」に参加するなど、積極的に行動を起こすようになりました。

法廷闘争へ:男性こそ当事者意識を持つべき

西さんと佐藤さんは、選択的夫婦別姓を求めて国を提訴しました。民法と戸籍法の規定が憲法に違反すると主張し、損害賠償を求めています。西さんは記者会見で、「男性が当事者意識を持てていないことが、この問題が進まない原因の一つ」と訴えました。

altalt結婚当初の葛藤を乗り越え、選択的夫婦別姓の実現に向けて共に歩む二人。

夫婦別姓:社会全体で考えるべき課題

結婚という幸せな出来事が、名字を変えることで苦悩に変わってしまう。西さんと佐藤さんの経験は、選択的夫婦別姓が個人の尊重に関わる重要な問題であることを改めて示しています。結婚後の名字、あなたはどう考えますか?

著名な家族法学者、山田教授(仮名)は、「選択的夫婦別姓は、個人のアイデンティティと家族のあり方を尊重する上で不可欠な制度です。多様な家族形態が認められる現代社会において、時代に即した法整備が必要とされています」と述べています。