旧日本軍慰安婦被害者を支援する正義記憶連帯の元理事長、尹美香(ユン・ミヒャン)元議員の横領事件に関する大法院(最高裁に相当)の判決が確定し、懲役1年6カ月、執行猶予3年が言い渡されました。寄付金横領という重大な罪でありながら、裁判の長期化により尹氏は4年間の議員任期を全うし、歳費も満額受領していたという事実に、韓国社会に衝撃が走っています。
司法の遅延が生んだ「喜劇」
尹美香氏は、国民から寄せられた慰安婦被害者支援のための寄付金、約884万円を私的に流用した罪で起訴されました。飲食代やマッサージ代、果ては菓子店やコーヒーショップでの支払いにまで使われていたという事実は、国民の善意を踏みにじる行為として大きな批判を浴びました。
alt(写真:朝鮮日報日本語版)ソウルで開催された平和の少女像展示会での尹美香氏。
本来であれば迅速に判決が下されるべき単純な事件でしたが、一審だけで2年5カ月を要し、判決も罰金刑という軽いものにとどまりました。二審で懲役刑が言い渡された後も、大法院での審理に1年2カ月が費やされ、確定判決まで実に4年2カ月もの歳月が流れました。この間、尹氏は国会議員の身分を維持し、反国家団体とされる朝鮮総連の行事にも出席していたのです。
韓国の著名な法学者、パク・ソンホ教授(仮名)は、「このような司法の遅延は、国民の司法への信頼を大きく損なうものであり、断じて許されるべきではない」と厳しく指摘しています。
他の事例に見る司法の遅延問題
尹美香氏の事件に限らず、韓国では裁判の長期化が深刻な問題となっています。祖国革新党の曺国(チョ・グク)代表の息子の不正入学に関与した崔康旭(チェ・ガンウク)元議員の事件も、確定判決まで3年8カ月を要しました。また、文在寅(ムン・ジェイン)前政権下の蔚山市長選挙介入事件で起訴された黄雲夏(ファン・ウンハ)議員の裁判は、一審判決まで3年10カ月かかり、現在も二審が進行中です。
これらの事件の多くは、金命洙(キム・ミョンス)氏が大法院長を務めていた時期に発生しており、司法の遅延に対する批判の声が高まっていました。
alt(写真:朝鮮日報日本語版)尹美香氏が出版した書籍。
現大法院長の曺喜大(チョ・ヒデ)氏は、「迅速かつ公正な裁判」を掲げていますが、具体的な改善は見られないとの指摘もあります。例えば、曺国代表の裁判も起訴から4年が経過した現在も大法院で判決が待たれている状態です。
司法改革の必要性
司法の遅延は、正義の実現を阻害するだけでなく、政治にも悪影響を及ぼします。当選無効となる判決が確定する前に議員任期が満了してしまう事態は、国民の意思を反映した政治運営を歪めるものです。韓国司法は、国民の信頼回復のために抜本的な改革に取り組む必要があると言えるでしょう。
司法の独立性と効率性の両立は、民主主義国家にとって不可欠な要素です。尹美香氏の事件は、韓国司法が抱える課題を改めて浮き彫りにしました。迅速かつ公正な裁判の実現に向けて、司法制度の改善と国民の監視が求められています。