米国の「脱中国化」戦略、ベトナムで中国依存を深める逆効果か

米国政府が推進する「デカップリング(脱中国化)」戦略が、ベトナムで予期せぬ「逆効果」を生んでいる。海外メディアは、中国製品の迂回輸出を阻止するための高率関税協定にもかかわらず、中国資本の対ベトナム投資がむしろ増加していると報じている。この現象は、米国の戦略が意図と異なる結果を招いていることを示唆している。

米国によるベトナムへの関税措置と「迂回輸出」対策

ブルームバーグ通信によると、トランプ前米大統領は今年4月、ベトナムに46%の高率関税を通告し、7月初旬には約90カ国中ベトナムと真っ先に具体的な関税協定を締結した。これにより、ベトナム産には20%、中国からの迂回輸出品には40%の関税が課せられる。これは、ベトナムへの低関税と中国産迂回輸出への高関税を区別し、「脱中国化」を促す狙いがあった。

デカップリング戦略を推進したドナルド・トランプ元米大統領デカップリング戦略を推進したドナルド・トランプ元米大統領

ホワイトハウスのピーター・ナバロ上級顧問は4月、「ベトナムは事実上、中国共産党の植民地だ」と非難し、米国の警戒感を露わにしている。

策略の裏腹:ベトナムへの中国資本流入が加速

しかし、米国の「脱中国化」戦略は効果がなく、むしろ中国資本の流入を促進しているとの見方も出ている。ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、スティーブン・チェン氏は、「ベトナムへの関税20%は最低水準ではないが、費用競争力や中国との地理的近さを考慮すれば、依然競争力がある」と指摘。「中国の製造業者は(米越関税協定後も)ベトナムへの設備移転を合理的と考えている」と分析する。

製造拠点としてのベトナムの魅力と中国との密接な関係

ベトナムの工業用不動産リース業者「KCNベトナム」のマネージャー、マイ・ツリン氏は「工業団地の分譲が早々と完売しており、中国企業にためらいはない」と語る。KCNベトナムは、需要増に備え、2028年までに工業団地を現在の11カ所から倍増以上にする計画だ。

ベトナム北部バクニン省の関係者グエン・ドゥック・ロン氏もブルームバーグに対し、「上半期に40億ドルの外資誘致を達成、さらに10億ドルが追加予定」とし、新規投資許可の準備を進めており「そのほとんどが中国系」であることを明らかにした。

チェン氏は、トランプ氏がベトナムのような国々を中国から分離しようとしているが、「中国が今も各種部品の主要供給元である以上、その努力は効果がないだろう」と強調。今年上半期のベトナムの対中輸入額は約850億ドルで、前年比26%増加し、輸入総額の40%に達した。ブルームバーグは、ベトナムの主力輸出品に使われる多くの核心部品が中国から輸入されていると指摘する。

「脱中国化」戦略の限界と今後の展望

米国の「脱中国化」戦略は、ベトナムにおいて中国からの投資流入や部品依存を強める逆説的な結果をもたらしている。これは、グローバルサプライチェーンにおける中国の強固な地位、ベトナムの経済的誘引力、そして地理的要因が複雑に絡み合うためだ。国際経済の構造は一国の政策だけで単純に変化するものではなく、今後の動向が注目される。

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