ドゥテルテ前大統領、麻薬戦争の責任認める!マルコス大統領、ICC逮捕要請なら協力表明で波紋

フィリピンで、ドゥテルテ前大統領が進めた強硬な麻薬撲滅戦争が再び注目を集めています。死者6000人超という衝撃的な数字を背景に、国際刑事裁判所(ICC)の捜査が進む中、マルコス現大統領はICCからの逮捕要請があれば協力する意向を表明。国民からの根強い支持を受けるドゥテルテ氏と、政権運営に腐心するマルコス氏の思惑が複雑に絡み合い、今後のフィリピン政局を揺るがす大きな波紋となっています。

ドゥテルテ氏、麻薬戦争の全責任を認める衝撃証言

2016年から2022年にかけて、ドゥテルテ前大統領は麻薬撲滅を掲げ、強硬な政策を推進しました。その結果、6000人以上が死亡したとされ、国際社会から批判を浴びてきました。ICCは「人道に対する犯罪」の疑いで予備調査に着手。ドゥテルテ政権はICCを脱退しましたが、マルコス政権下で調査は継続されています。

ドゥテルテ氏が下院公聴会で発言する様子ドゥテルテ氏が下院公聴会で発言する様子

10月28日の上院公聴会で、ドゥテルテ氏は麻薬戦争における法的、道義的責任を認める発言を行い、波紋を広げました。さらに、ダバオ市長時代に「殺人部隊」を組織していたこと、自らも殺害に関与していたことなどを証言。これらの衝撃的な告白は、フィリピン社会に大きな衝撃を与えました。フィリピン警察は、未解決の薬物関連死亡事案の洗い出しを指示。事態は新たな局面を迎えています。

マルコス大統領、ICC逮捕要請への協力表明で政局緊迫

マルコス大統領は、ICCが国際刑事警察機構(ICPO)を通じてドゥテルテ氏の逮捕を要請した場合、協力する意向を表明しました。ドゥテルテ氏自身もICCの捜査を受け入れる姿勢を示しており、今後の展開が注目されます。

このマルコス大統領の発言の背景には、ドゥテルテ家との政治的な対立があるとみられています。ドゥテルテ氏の長女であるサラ副大統領は、次期大統領選への出馬を視野に入れ、現政権への批判を繰り返しています。ドゥテルテ氏もダバオ市長選への出馬を表明しており、当選すればサラ氏の勢力拡大につながると予想されます。

ドゥテルテ氏への根強い支持と政権のジレンマ

国民の間ではドゥテルテ氏への支持が根強く、マルコス政権は難しい対応を迫られています。ドゥテルテ氏への圧力を強めれば、同情票が集まり、ドゥテルテ家を利する可能性も指摘されています。ドゥテルテ氏自身も、こうした世論の動向を計算に入れているとの見方もあります。

今後の選挙を控え、マルコス政権はICCの動向や世論を見ながら、慎重な対応を迫られることになりそうです。フィリピン政治の専門家の中には、「ドゥテルテ氏への対応次第では、マルコス政権の命運を左右する可能性もある」と指摘する声も上がっています。