日本各地で人口減少が深刻化する中、自治体間の人口移動は地域の活力に直結する重要な指標です。特に「転出超過率」は、その地域からどれだけの人が他地域へ流出しているかを示す割合であり、社会経済的な課題を浮き彫りにします。本記事では、総務省が公表した最新の「住民基本台帳人口移動報告(2024年・年報)」に基づき、全国の自治体を対象とした転出超過率ランキングを詳細に分析し、その背景にある要因と影響を深く掘り下げていきます。
最新データが示す「転出超過率」の現状
総務省の「住民基本台帳人口移動報告」は、国内の市区町村間での人口移動を網羅的に捉えた貴重なデータ源です。このランキングは、2024年1月1日時点の人口を基準に、他市区町村への転出者数から他市区町村からの転入者数を差し引いた「転出超過数」を人口で割ることで「転出超過率」を算出しています。国外からの転入・転出や同一市区町村内の転居は含まれず、あくまで国内の純移動に焦点を当てています。この統計は、届出ベースで集計されるため、実際の移動時期と届出時期にずれが生じる場合がある点も考慮が必要です。東京都23区は区単位、政令指定都市は市単位で計上されています。
日本地図に重ねた転出超過率の高い自治体を示すグラフィック
上位を占める自治体とその背景
今回のランキングで最も高い転出超過率を記録したのは、石川県輪島市で6.82%でした。これに続くのは石川県珠洲市(6.51%)、東京都小笠原村(4.42%)、大分県国東市(4.28%)、千葉県富里市(3.61%)となっています。
能登半島地震の影響が顕著な地域
1位の輪島市は人口2万3119人に対し1577人、2位の珠洲市は人口1万2574人に対し818人の転出超過となりました。これらの地域は2024年1月に発生した能登半島地震により甚大な被害を受け、多くの住民が避難生活を余儀なくされたことが、人口流出の主要因と考えられます。また、9位にランクインした七尾市(2.07%)も同様に被災地であり、地震が地域社会にもたらした深刻な影響が浮き彫りになっています。
北海道の地方都市における人口減少問題
北海道の地方都市においても、人口流出は深刻な課題となっています。士別市(1.98%、11位)、紋別市(1.90%、12位)、夕張市(1.84%、14位)、名寄市(1.60%、18位)、留萌市(1.55%、20位)など、上位100位には16もの北海道の自治体がランクインしました。これらの地域では、経済的な機会の少なさや若年層の都市部への流出が長年にわたる構造的な問題として存在しており、地域経済の活性化や雇用創出が喫緊の課題となっています。
人口規模と転出超過率の関係性
ランキング全体を見ると、人口3万人未満の小規模自治体が上位を多く占める傾向があります。これは、わずかな人口移動でも転出超過率に大きな影響を与えるためです。しかしながら、千葉県成田市、東京都新宿区、沖縄県那覇市、広島県福山市といった人口10万人を超える比較的大きな自治体も多数ランクインしており、人口流出は規模を問わず日本全体で直面している課題であることを示唆しています。
ランキング一覧(抜粋)
- 1〜25位
- 26〜50位
- 51〜75位
- 76〜100位
- 101〜125位
- 126〜150位
- 151〜175位
- 176〜200位
- 201〜225位
- 226〜250位
- 251〜275位
- 276〜300位
- 301〜325位
- 326〜350位
- 351〜375位
- 376〜400位
- 401〜425位
- 426〜450位
- 451〜475位
結び
今回の転出超過率ランキングは、能登半島地震による災害の影響、そして長年の構造的な課題を抱える地方都市における人口減少の現実を浮き彫りにしました。特定の災害による一時的な流出もあれば、経済的、社会的な要因による慢性的な人口減少もあります。これらのデータは、日本が直面する人口減少問題の複雑さを物語っており、各自治体は地域の特性に応じたきめ細やかな対策、例えば産業振興、子育て支援、医療・福祉サービスの充実などを通じた「地方創生」に一層注力していく必要があるでしょう。
出典
- 総務省「住民基本台帳人口移動報告(2024年・年報)」
- 東洋経済オンライン





