幼い頃、親や大人から「塩分を摂りすぎると腎臓に悪い」と繰り返し聞かされた経験は、多くの方がお持ちかもしれません。食卓で塩や醤油を料理にかけるたび、「かけすぎだ」と注意された記憶は、今でも鮮明に残っていることでしょう。時には、子ども同士の会話で「塩をかけすぎると死ぬ」「醤油を飲むと即死する」といった、尾ひれがついた情報に触れ、腎臓という臓器に対して漠然とした畏怖の念を抱いた方もいるはずです。
人生の質を左右する「腎臓機能」の維持
こうした幼少期の経験が影響しているかは定かではありませんが、腎臓が人体にとって極めて重要な臓器であることは紛れもない事実です。腎臓専門医である上月正博氏も、著書『腎臓大復活:100歳まで人生を楽しむ「強腎臓」の作り方』の中で、「決して大げさではなく、腎臓の機能をどれだけ長くキープできるかによって、人生後半の充実度が決まると言ってもいい」と強調しています。この言葉は、腎臓の健康が、私たちが想像する以上に日々の生活の質、ひいては人生全体の幸福度に直結していることを示唆しています。
人生後半の充実度を左右する腎臓の健康維持を考える人物のイメージ
腎臓が担う「いつも通り」の生命維持機能
腎臓がそれほどまでに重要である理由は、私たちの生命活動を「いつも通り」に動かすために不可欠な働きを担っているからです。腎臓は血液を濾過して体内の老廃物や余分な水分を排出し、血液成分を一定に調整する役割を果たしています。この「いつも通り」の状態を維持する機能があるからこそ、私たちは毎日を健康に、そして安定して生きることができるのです。幼い頃に言われた「腎臓によくない」という言葉は、突き詰めれば「いつも通りの日常を送れなくなってしまう」ことへの警鐘だったと言えるでしょう。この本質的な意味を理解することは、現在の私たちにとって、自身の腎臓ケアを見直す上で非常に重要な視点となります。
加齢と腎臓機能の低下:なぜ早期ケアが重要か
残念ながら、他の臓器と同様に、腎臓の機能も加齢と共に少しずつ低下していくのが自然な流れです。腎臓の働きが衰えると、これまで当たり前のようにできていた「いつも通り」のことができなくなり、日常生活に支障をきたす可能性が高まります。例えば、体液バランスの乱れによるむくみや疲労感、さらには重篤な慢性腎臓病(CKD)へと進行し、透析が必要になるケースも少なくありません。臓器の健康寿命を延ばすことは、結果的に個人の健康寿命を延ばし、人生後半を活力に満ちたものにするための鍵となります。現代社会では、食生活や生活習慣が腎臓に与える影響も大きいため、若いうちからの意識的なケアが、将来の「いつも通り」を守るために不可欠です。
まとめ
腎臓は、私たちの生命活動を支え、人生後半の充実度を大きく左右する重要な臓器です。幼少期に漠然と抱いていた腎臓への意識を、専門医の知見を通じて「いつも通り」の日常を守るための具体的な行動へと昇華させる時が来ています。加齢による機能低下は避けられませんが、日々の食生活や生活習慣を見直し、適切な腎臓ケアを実践することで、健康的な「臓器100年時代」を生き抜き、質の高い人生を享受することが可能になります。
参考文献:
- 上月正博 著 『腎臓大復活:100歳まで人生を楽しむ「強腎臓」の作り方』 東洋経済新報社


