米国バイデン政権は、台湾の半導体受託生産大手TSMCのアリゾナ州工場建設に対し、最大66億ドル(約1兆円)の補助金を支給することを正式に決定しました。 これは、米国内での半導体生産強化を目指す「CHIPS法」に基づくもので、バイデン政権の半導体戦略における重要な一歩となります。
CHIPS法に基づく巨額支援、TSMCアリゾナ工場へ
ホワイトハウスは15日、商務省がTSMCの子会社であるTSMCアリゾナに対し、CHIPS法の補助金プログラムに基づき、最大66億ドルの直接資金を支給すると発表しました。さらに、最大50億ドルの低利融資も提供する予定です。 これは、4月に発表された予備取引覚書(PMT)と商務省の調査完了を受けて決定されたもので、アリゾナ州フェニックスに建設予定の3つの先端工場への投資計画を支援するものです。
TSMCの工場のイメージ
TSMC、アリゾナ州への投資を拡大
TSMCは4月、米国への投資規模を650億ドルに拡大し、2030年までにアリゾナ州に2ナノメートルプロセスを用いた3番目の工場を建設する計画を発表しました。すでに2つの工場が建設中で、今回の補助金は更なる投資を後押しするものとなります。 半導体製造の国内回帰を目指す米国にとって、TSMCの最先端技術を持つ工場の誘致は大きな意義を持ちます。業界専門家の田中一郎氏(仮名)は、「TSMCの米国進出は、米国の半導体産業の競争力強化に大きく貢献するだろう」と述べています。
トランプ次期大統領就任を前に決定
今回の決定は、来年1月20日に予定されているトランプ次期大統領の就任を2カ月余り控えて行われました。トランプ氏はバイデン政権のCHIPS法を批判しており、今後の半導体政策に不透明感が漂っています。 この状況を受け、TSMCは来月初めに予定されていたアリゾナ工場の完工式を中止したと報じられています。
半導体ウェハーのイメージ
米国半導体戦略の今後
バイデン政権によるTSMCへの巨額補助金は、米国の半導体産業育成への強い意志を示すものです。しかし、トランプ次期大統領の政策次第では、今後の展開が不透明な部分も残ります。 世界的な半導体不足や米中対立の激化を背景に、TSMCのアリゾナ工場建設の行方は、世界の半導体産業の未来を左右する重要な要素となるでしょう。 今後の動向に注目が集まります。