なんでもかんでも「親の7光り」だと形容するのは勝手だけれど、「親の14光り」という造語は、さすがにどうかと思う。
こんな造語が誰のために作り出されたのか。(以前にも誰かいたかのかもしれないが)石橋静河のためである。石橋は、先日10月28日に行われた「東京ドラマアウォード 2024」授賞式で主演女優賞を受賞している。受賞対象になった『燕は戻ってこない』(NHK総合、2024年)での名演が記憶に新しい彼女に、さっきの造語はどのように作用しているというのか。
イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、石橋静河の過去作を振り返りながら、彼女の魅力が自明であることを解説する。
「親の14光り」とは……
今年の夏ごろ、石橋静河に関して、なんだか変なタイトルが付いたネット記事を嫌というほど目にした。タイトルに必ず「親の14光り」と入っていたのだけれど、パッと見てその意味がまず理解できなかった。
14光りとは、ようするに父・石橋凌の7光りと母・原田美枝子の7光りを足した14ということらしい。なんだよその単純計算。話題作りに余念がないネット記者たちは、よくもこんな造語、命名ができるよなぁ(SNS上での批判的命名でもあるようだが)……。
そんな造語が生まれた背景には、石橋が出演したドラマ『ブラック・ジャック』(テレビ朝日、2024年)が最大要因としてあった。同作では、石橋が演じたドクター・キリコ役を女性に変えた設定が手塚治虫原作ファンのひんしゅくを買った。さらに2次元のキャラクターを実写化へ翻訳するためのビジュアル再現度が批判に輪をかけ、さっきの造語へとつながったのだと筆者は理解している。
撮れ高をみたす回答
2017年に公開された『夜空はいつでも最高密度の青色だ』で、映画初主演を果たした石橋が、『日刊スポーツ』のインタビューに答えた当時の記事が参考になる。「両親の存在はプレッシャーだった」という記者の直球質問に対して石橋はこう答えた。
「プレッシャーでは…ないですね」。ぶしつけな質問に対してしっかり明言している。さらに、アメリカとカナダでダンス留学を経験してきた石橋が演技の道へ進んだことについて「女優に転身した」と質問が投げかけられる。
「自分自身が持っているものを否定しなくなった時に、1番自分らしくいられるのかな、ちゃんと伝わるようになるのかなと感じ始めています」と言葉を手繰り寄せる彼女はきっと内心、どうして初主演映画の内容については聞かずに自分の親との関係性ばかり探られるのかと首をかしげていたように想像する。
それでもちゃんとインタビュー記事としての撮れ高をみたす回答をしながら、はっきりと二世俳優などというなよと釘をさしてもいる。にもかかわらず、同インタビューから7年以上経った今、今度は14光りという造語がうまれてしまう現実はどうしたものか。