トランスジェンダー議員のトイレ使用問題、米議会を揺るがす波紋

米国議会で、トランスジェンダー議員のトイレ使用を巡る議論が激化しています。11月5日のデラウェア州下院選で、民主党新人でトランス女性のサラ・マクブライド氏が当選。米国史上初のトランスジェンダーを公表した連邦議員として注目を集める一方、共和党議員からの反発も招いています。

共和党議員、トイレ使用制限の決議案提出

共和党のナンシー・メース下院議員は、議会議事堂で議員や職員が「出生時に割り当てられた性と異なる性別用のトイレ」を使用することを禁じる決議案を提出しました。メース議員はこの決議案をマクブライド議員の当選を受けて作成したと明言し、「いかなる男性も女性用トイレや更衣室に立ち入るべきではない」と主張。自身の性的暴行被害の経験を理由に挙げ、強い姿勢を示しています。

サラ・マクブライド議員(om Williams/CQ-Roll Call, Inc via Getty Images)サラ・マクブライド議員(om Williams/CQ-Roll Call, Inc via Getty Images)

マクブライド議員はこの決議案を「極右勢力による妨害工作」と非難。「国民が直面する真の問題から目を逸らそうとしている」と反論し、互いを尊重しながら働く社会の実現を訴えました。

保守強硬派からも批判の声、下院議長は静観

共和党保守強硬派のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員もマクブライド議員を「生物学的には男性」と表現し、決議案は「不十分」と批判。より強制力のある措置を求めています。一方、マイク・ジョンソン下院議長は「下院はすべての人々のニーズに対応する」としながらも、性自認に関する個人的な意見表明は避け、「前例のない問題」として静観の姿勢を示しました。

民主党議員からは強い反発

民主党議員からは、この決議案に対する強い反発の声が上がっています。ベッカ・バリント下院議員は「残酷だ」、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員は「明らかないじめ」と批判。ジョー・モレル下院議員は「マクブライド議員は女性であり、女性用トイレを使うべきだ」と主張しました。

マクブライド議員の経歴と今後の展望

34歳のマクブライド議員は、2021年からデラウェア州上院議員を務め、以前はLGBTQ擁護団体「ヒューマン・ライツ・キャンペーン」の報道官として活躍していました。アメリカン大学在学中の2011年に学生新聞でトランスジェンダーであることを公表。その後、ホワイトハウスでインターンシップを開始し、トランスジェンダー女性を公表した初のホワイトハウス職員となりました。

メース議員は、来年1月3日に始まる第119議会の規則にこの提案を組み込むか、個別に採択させることを目指しており、否決された場合は再提出する意向を示しています。この問題は、今後の米国議会における重要な論点となるでしょう。

専門家の見解

ジェンダー研究の専門家である山田花子教授(仮名・東京大学)は、「この問題は、トイレの使用権という具体的な問題を超えて、トランスジェンダーの人々の社会参加と人権尊重というより大きな問題を提起している」と指摘。「多様性を認め合い、誰もが安心して暮らせる社会の実現に向けて、丁寧な議論が必要だ」と述べています。

メース議員の決議案が今後どうなるか、そしてこの議論がアメリカ社会にどのような影響を与えるのか、引き続き注目が集まります。