トランスジェンダー議員のトイレ使用制限:米下院議長が支持、波紋広がる

アメリカ連邦下院で、トランスジェンダー女性の議員による女性用トイレの使用を制限する動きが波紋を広げています。共和党のマイク・ジョンソン下院議長が新規則を支持し、民主党やLGBTQ+支援団体から批判の声が上がっています。本記事では、この問題の背景、関係者の反応、そして今後の展望について詳しく解説します。

女性専用スペースをめぐる議論

今回の騒動の発端は、デラウェア州選出のサラ・マクブライド氏が、トランスジェンダーであることを公表し、初の連邦議員として当選したことにあります。これを受け、共和党のナンシー・メイス下院議員が女性用トイレの使用を禁止する決議案を提出しました。ジョンソン下院議長は「女性には女性だけの空間が必要」と述べ、メイス議員の案を支持する姿勢を示しました。

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マクブライド氏は、トイレ問題で争うために議員になったのではないと反論。「デラウェア州民のために、家計の負担軽減のために働きたい」と強調し、新規則には反対ながらも従う意向を示しました。

各党の反応と世論の動向

民主党のジョン・フェッターマン上院議員をはじめ、多くの民主党議員は規則変更を強く批判しています。フェッターマン氏はソーシャルメディアで「誰かを貶めるために働くつもりはない」と表明しました。また、民主党のハキーム・ジェフリーズ下院少数党院内総務は、メイス議員がマクブライド氏をいじめていると非難しました。

一方、メイス議員は、この措置はマクブライド氏個人を標的にしたものではなく、女性のプライバシーと安全を守るためだと主張しています。彼女は「生物学的男性が女性のプライベートな空間に入るのを認めるつもりはない」と断言しました。

世論調査では、トランスジェンダーの権利を支持する動きは「行き過ぎている」と考える人が半数以上を占めています。しかし、経済や移民問題などに比べて、トランスジェンダー問題を重視する有権者は少ないという結果も出ています。

新規則の内容と共和党の戦略

新規則は、議事堂や下院のオフィス施設内にある男女別トイレ、更衣室、ロッカールームなど、すべての男女別設備に適用されます。下院議員にはそれぞれ専用のトイレが割り当てられており、一部にはユニセックスのトイレも設置されています。

共和党はここ数年、トランスジェンダー問題に焦点を当てた政策を推進しています。未成年者の性別適合手術へのアクセス制限や、トランスジェンダー女性のスポーツ競技への参加制限などがその例です。

メイス議員の経歴と主張の変遷

2020年に初当選したメイス議員は、当初はLGBTQ+の権利を支持する穏健派として知られていました。かつて自身のウェブサイトに「誰も差別されるべきではない」と記していたメイス議員ですが、現在の行動は過去の主張と矛盾しているように見えます。

広報担当者は、メイス議員が同性婚を支持し、関連法案に賛成票を投じていることを強調し、女性の保護を差別とみなすのは誤りだと反論しました。

今後の展望

今回のトイレ使用制限をめぐる議論は、アメリカ社会におけるトランスジェンダーの権利をめぐる対立を改めて浮き彫りにしました。今後、この問題がどのように展開していくのか、そして他の州や自治体にも同様の動きが広がるのか、引き続き注目が必要です。