「今の日本人は国内旅行すら行けなくなった」という記事が先日話題になりました。その主な理由として「お金がない」ことが挙げられますが、それでも旅行を楽しむ人々が少なからず存在します。この年末年始、海外旅行者は前年比31.5%増の100万人と、コロナ禍前の約9割にまで回復する見込みであることがJTBの予測で示されました。国内旅行者数も3886万人で、前年比2.0%増と堅調です。カレンダーの並びが良く、最長9連休(12月27日~1月4日)となる今回の年末年始は、長期旅行を計画する絶好の機会となりました。
「金がない」は本当か?年末年始旅行の最新動向
ANAが発表した国際線の予約状況によると、ハワイ線は年末年始期間として過去最高の予約を記録し、バンコク、シンガポール、ソウル線などのアジア方面も好調です。円安や物価高といった厳しい経済状況が続く一方で、海外旅行者数が昨年より3割増加するという「旅行格差」とも呼べる現象が見られます。このデータは、「お金がない」という一見普遍的な声の裏で、日本人の消費行動が多様化している現状を浮き彫りにしています。
ANAハワイ線、A380フライングホヌが過去最高予約
円安・物価高でも海外へ 「旅行格差」の実態
「お金に余裕はないけれど、旅行はする」という人々は、どのような工夫をしているのでしょうか。一つの傾向として、日々の生活費を極限まで節約し、その分を趣味である旅行費用に充てる「極限節約型」が挙げられます。例えば、衣料品はユニクロやGU、しまむらなどで調達し、外食を控えて自炊やお弁当でランチを済ませるなど、お金を使うべきところと使わないところを徹底的に管理しています。
極限節約と賢い選択:工夫して旅を楽しむ人々
旅行手段においても工夫が見られます。飛行機はLCC(格安航空会社)を利用し、宿泊はドミトリーを選ぶことで費用を抑えるケースが一般的です。また、旅行時期を繁忙期から少しずらすことで、さらにコストを削減しています。国内旅行では、移動手段にこだわらず、夜行高速バスを利用して交通費を節約する人も少なくありません。
海外の渡航先では、ベトナム、マレーシア、東ヨーロッパなど、現在の円安下でも物価が比較的安い国や地域を選ぶ傾向が見られます。タイはかつてよりも為替レートや物価が上昇していますが、シンガポールや香港などに比べて5つ星のラグジュアリーホテルがまだ安価なため、頻繁に訪れるホテル愛好者もいます。
さらに、「ポイ活」を駆使して旅費を浮かす方法も普及しています。普段の買い物をカード決済してポイントを貯め、それをマイルや宿泊券に交換して航空券代や宿泊費に充てるのです。生活費だけでなく、交通費や光熱費なども工夫してポイントを貯めれば、「塵も積もれば山となる」で、年間でかなりの金額を節約できます。
また、「推し活」を目的とした旅行も根強い人気を誇ります。韓国のK-POPや韓流ドラマのロケ地巡り、国内ではテーマパーク、ライブ、プロ野球やJリーグなどのスポーツ観戦など、明確な目的がある旅にはお金を使いやすい傾向が見られます。現在の国際線では日本人観光客が減少傾向にある中、韓国路線だけは例外で、推し活や美容整形を目的として毎月、あるいは数ヶ月ごとに韓国を訪れる日本人女性が多いのが現状です。
結論
「お金がない」という声が聞かれる一方で、年末年始の旅行動向を見ると、多くの日本人が国内外の旅行を楽しんでいることが分かります。これは、経済的な状況に応じて「極限節約」や「賢い選択」、そして「推し活」といった明確な目的を持つことで、旅行を実現している人々がいることを示しています。円安や物価高が続く中でも、個人の工夫と強い目的意識が、日本の旅行市場を多様化させ、新たな消費行動を生み出していると言えるでしょう。





