スウェーデン政府は18日、欧州で近く戦争が始まる可能性も視野に入れ、国民に対して食料や医薬品の備蓄を促すパンフレットの配布を始めた。フィンランド政府も同日、同様のデジタル冊子を発表した。ウクライナを巡るロシアと欧米の対立が激化する中、スウェーデン民間緊急事態庁は「安全保障環境は劇的に変化した。私たちは全員、戦争への『耐性』を高める必要がある」と警告している。
スウェーデン政府作成の冊子には、空襲時の避難方法、防空壕(ごう)の見つけ方、負傷の際の止血法などが約30ページにわたって記載されている。食料や薬のほか、子供用のおむつ、生理用品、ウエットティッシュなどの備蓄も呼びかけている。冊子は18日から2週間かけて国内の全520万世帯に郵送する予定で、既にデジタル版は数万回ダウンロードされたという。
また、フィンランド内務省もデジタル冊子を発行し、停電や断水、通信障害などへの対処法を掲載した。印刷物は配布しないという。フィンランドでは冬場に氷点下20度まで気温が下がることもあり、停電が命の危険に直結するため、国民に予備電源装置の確保も促している。
ロシアと西欧の間で長年の中立政策を維持してきた両国は、2022年のウクライナ侵攻に危機感を強め、23~24年に西側軍事同盟の北大西洋条約機構(NATO)に加盟した。
スウェーデン軍のビデン元最高司令官は米メディア「ポリティコ」に対し、バルト海に浮かぶスウェーデン領ゴトランド島の南東にロシアの飛び地カリーニングラード州が位置することを挙げ、「プーチン露大統領は間違いなくゴトランド島(の支配)を視野に入れている。彼の目標はバルト海だ」と述べた。【ロンドン篠田航一】