中国で無差別殺傷事件多発…背景にある「超格差社会」と「過干渉」の実態とは?

近頃、中国で無差別殺傷事件が相次いで発生し、世界に衝撃を与えています。広東省での自動車暴走事件、江蘇省の専門学校での刃物襲撃事件、そして湖南省での児童轢き逃げ事件など、痛ましい出来事が続いています。一体なぜ、このような悲劇が繰り返されるのでしょうか?本記事では、専門家の見解を交えながら、事件の背景にある社会問題を深く掘り下げていきます。

競争激化と閉塞感:中国社会の「超格差」

慶應義塾大学の小嶋華津子教授は、現代中国社会を「超格差社会」と表現しています。激しい競争社会の中で、成功への道は限られており、多くの人々が官僚や外資系企業、大手銀行といった限られた職種を目指しています。

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この熾烈な競争環境下で、試験や就職活動に失敗した人々は「自分はもう成功できない」「やり直すチャンスはない」という深い絶望感に苛まれるといいます。一度レールから外れてしまうと、這い上がることが困難な社会構造が、事件の遠因となっている可能性が指摘されています。

過干渉と自立の欠如:管理社会の歪み

習近平政権下における未成年者のオンラインゲーム時間制限や「家庭教育促進法」など、個人の生活に深く介入する政策も問題視されています。静岡県立大学の諏訪一幸客員研究員は、中国社会における「過干渉」「過管理」が個人の自立を阻害し、「何か問題が起きたら社会のせいだ」という依存的な思考を助長していると指摘します。

過剰な管理によって、問題解決能力や自己責任の意識が育ちにくく、社会への不満を募らせてしまう構図が浮かび上がります。

不満の捌け口の不足:相談体制の不備

中国には地域に「トラブル相談所」のような機関は存在するものの、専門のカウンセラーや訓練を受けた職員が配置されているケースは少なく、十分な対応が取れていないのが現状です。

さらに、NGOやNPOといった市民団体への規制も厳しく、民間レベルでのサポート体制も十分に機能しているとは言えません。人々が抱える不満や悩みを相談し、解決へと導くための適切な窓口が不足していることも、社会不安を増幅させる一因となっていると考えられます。

絶望の連鎖を断ち切るために

中国で頻発する無差別殺傷事件は、複雑に絡み合った社会問題の表れと言えるでしょう。「超格差社会」が生み出す競争の激化と閉塞感、過干渉による自立の欠如、そして不満を解消する手段の不足。これらの問題が複合的に作用し、人々を追い詰めている現状が明らかになりました。

一刻も早くこの負の連鎖を断ち切り、誰もが安心して暮らせる社会を実現するために、中国政府は抜本的な改革に取り組む必要があるでしょう。