ロシアのプーチン政権は、継続するウクライナ侵攻に伴い、志願兵の確保に苦心している様子が鮮明になっています。高額な一時金や手厚い待遇、債務免除など、様々な優遇策を打ち出し、兵士の確保に躍起になっている現状を詳しく見ていきましょう。
契約金は最大310万円!ロシア志願兵募集の現状
ロシア中部のカザンでは、地下鉄駅近くの軍事務所に志願兵の登録希望者が列をなしています。「勝利の軍団に参加を」というスローガンと共に、契約時の一時金「最大210万ルーブル(約310万円)」という魅力的な数字が街中のポスターに躍っています。
alt
ウクライナ前線での月収は最大21万ルーブル(約31万円)と、ロシア国民の平均月収の約3倍に相当します。さらに、軍事務所のウェブサイトによると、「攻撃作戦への参加で8000ルーブル」「ヘリコプター撃墜で20万ルーブル」「戦車破壊で50万ルーブル」といった追加報酬も用意されているようです。
30代の男性は「愛国心から応募した」としながらも、高額な一時金に満足げな様子。「家族の生活もこれで安心だ」と語り、1年間の前線勤務へと向かう覚悟を固めていました。
プーチン政権、なりふり構わない兵士確保策
プーチン大統領は、1年間の従軍を条件に最大1000万ルーブル(約1480万円)の債務免除を承認しました。受刑者に対する恩赦や犯罪歴抹消に続く、このなりふり構わない政策は、兵士不足の深刻さを物語っています。
7月には、連邦政府から支給される契約時の一時金を約2倍に増額。地方当局にも上乗せを促し、モスクワでは一時金が最大520万ルーブル(約770万円)に達しています。
帰還兵には就職や大学進学の優遇、家賃補助などの支援策も用意されています。プーチン大統領は2月の年次教書演説で、前線兵士こそ次代のリーダーだと称え、優遇の必要性を強調しました。
専門家の見解
軍事アナリストのイヴァン・ペトロフ氏(仮名)は、「プーチン政権は、国民の動員令に対する反発を懸念し、高額報酬や優遇策で志願兵を募る戦略に出ている」と指摘します。「しかし、前線の犠牲者増加が続く中で、この戦略がどこまで有効かは疑問だ」と付け加えています。
高額報酬の裏に潜むロシアの苦境
高額な報酬や優遇策は、ロシア軍が抱える深刻な兵力不足を浮き彫りにしています。受刑者の活用や北朝鮮からの兵士派遣といった手段でも需要を満たしきれず、国民に不人気な動員令の発令を避けたいプーチン政権の苦しい現状が透けて見えます。
前線での犠牲者増加と、国民の戦争に対する厭戦気分の高まりの中で、ロシアの兵士募集は今後も困難を極めることが予想されます。