日本の年間出生数が、統計開始以来初めて70万人を下回った。同時に発表された合計特殊出生率も過去最低の1.15となり、少子化の進行がかつてないスピードで加速している現実が浮き彫りになった。わずか2年前に80万人割れが報じられたばかりであり、国立社会保障・人口問題研究所は2035年には年間出生数が60万人を下回る可能性も指摘している。この深刻な状況に対し、政府や専門家はどのような見解を示しているのだろうか。
過去最低を記録した出生数:公式データと政府の認識
2024年の国内出生数は、厚生労働省の統計によると、初めて70万人を下回り、統計開始の1899年以降で過去最低を記録した。同時に発表された合計特殊出生率は1.15となり、これも過去最低を更新した数字である。この数字は、わずか2年前の2022年に年間出生数が80万人を割り込んだことが大きなニュースとなった記憶も新しい中で、少子化が加速度的に進んでいることを明確に示している。
林芳正官房長官は、この事態に対する政府の認識を記者会見で表明した。「経済的な不安定さや、仕事と子育ての両立の難しさなど、個々人が持つ結婚や出産、子育てに関する希望の実現を阻む様々な要因が複雑に絡み合っている」と現状を分析し、「多くの方々が子どもを生み育てたいという願いを持っているにも関わらず、それが実現しておらず、少子化に歯止めがかかっていない」と述べ、問題の深刻さを改めて強調した。
alt=”日本の少子化傾向を示すグラフまたはイメージ(子供と親のシルエット)”
地方と都市で異なる少子化の様相:山口真由氏の見解
39歳での出産経験を持つ信州大学特任教授の山口真由氏は、この少子化が地方と都会の双方で進行している現状とその背景にある要因について分析している。山口氏によると、かつて3世代同居などで子育てがしやすいとされてきた地方からは、若い女性の流出が顕著であり、これが地方における出生数の激減を招いているという。
一方、そうした地方からの人口移動も受け入れ、出会いの機会も多いとされる東京でも、少子化は深刻である。東京の合計特殊出生率は2年連続で1を下回っており、これは全国平均よりも低い。東京で結婚したカップルは子どもを持つ傾向にあるものの、子どもを持つ世帯の中で一人っ子の割合が非常に高いことが特徴だ。東京に住む子持ち世帯の約40%近くを一人っ子が占めている現状を山口氏は指摘する。
alt=”東京の都市風景と公園で遊ぶ子供たち(都市部における少子化の状況)”
「怒涛の30代」と女性の社会進出:少子化の真の要因を探る
東京で一人っ子が多い理由の一つとして、山口氏が挙げるのが第一子を産む年齢の高さである。高学歴化が進み、キャリア志向を強く持つようになった現代の女性たちは、「怒涛の30代」を過ごすことが多いという。失恋、転職、留学といった人生の大きなイベントを短期間に詰め込み、心身ともにあっぷあっぷになりながら、ようやく一息ついた頃に初めての出産を迎えるケースが増えている。山口氏自身も、39歳で第一子を出産した経験から、その厳しさを体現していると語る。
しかし、こうした現状をもって「女性の社会進出こそが少子化の原因だ」と考えるのは誤りであると、山口氏は強く主張する。実際、専業主婦世帯と共働き世帯の出生率を比較すると、2018年には共働き世帯の出生率が専業主婦世帯を逆転しているのだ。現代において子育てにかかる住居費や教育費などを考慮すれば、夫婦が共に働く「2馬力」でなければ家計を支えるのが難しいのが正直なところであり、経済的要因も無視できない少子化の背景にあると示唆している。
まとめ
少子化は、日本の社会構造そのものに関わる喫緊の課題である。年間出生数が70万人を割り込み、合計特殊出生率が過去最低を更新した現実は、その進行が予測を上回るスピードで加速していることを示している。政府は複合的な要因の絡み合いを指摘し、専門家は地域や都市の異なる様相、そして女性が直面する現実や経済的背景に光を当てている。「女性の社会進出が少子化の原因」といった単純な議論を超え、多様な視点からこの問題の本質を見つめ直し、実効性のある対策を講じることが、今まさに求められている。
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