兵庫県の斎藤元彦知事の選挙戦に携わったPR会社社長の記事を巡り、公職選挙法違反の疑いが噴出した。ジャーナリストの小林一哉さんは「12月2日は県知事選の収支報告書の提出期限だ。そこですべてのカネの流れが明らかになるだろう」という――。
【写真】折田氏のメルチュが作成した選挙公報、選挙ポスターなど
■PR会社への支払いは買収か否か
兵庫県知事選で再選した斎藤元彦知事(47)の選挙戦の広報・PRに関わった株式会社merchu(メルチュ)の折田楓(おりたかえで)社長(33)が投稿プラットフォーム「note」に「広報全般を任せていただいた」などと“暴露”した記事を巡り、公職選挙法が禁ずる買収に当たるのではないかという新たな疑惑が浮上した。
公職選挙法では、事務員や車上運動員への報酬のほか、ポスターやチラシにかかる費用については対価の支払いが認められている。一方、有償で広報やSNS運用などを依頼することは買収に当たる可能性がある。
筆者は連日行われた斎藤知事と代理人弁護士の会見を見て、買収に当たる可能性が極めて高いと感じた。
11月27日の定例会見で、斎藤知事は「公選法に違反することはないと認識している」と何と10回以上も繰り返して、違法性を否定した。
記者たちの厳しい追及には、具体的な回答はすべて避けて、「代理人弁護士に対応を一任している。弁護士に聞いてほしい」など苦しい言い訳に終始した。
■代理人弁護士からボロが出そう
その後に開かれた斎藤知事の代理人・奥見司(つかさ)弁護士は会見で、折田氏の投稿について、「事実と、全く事実でない部分が記載されている。そういう意味では『盛っている』と認識している」と述べ、公選法に関係する部分は「事実ではない」と全面的に否定した。
斎藤知事ら陣営のあらゆる情報を集めたから、奥見弁護士は「わたしが一番詳しく説明できるだろう」と述べたが、11月20日の騒動のあと、折田氏が記事の一部を削除、修正したことをあろうことか承知していなかった。
つまり、肝心の折田氏からの事情聴取をまったく行っていなかったのだ。
民事事件を主に扱う奥見弁護士が非常に複雑で細かい公選法や政治資金規正法に精通しているとは思えない。
今後、折田氏の投稿記事の事実関係だけでなく、さまざまなボロが出てしまうことは間違いない。