日本社会で「努力」は美徳とされ、成功への鍵と見なされています。幼い頃から「頑張れ!」と励まされ、努力の大切さを教え込まれて育つ私たち日本人にとって、これは当然のことかもしれません。しかし、世界には異なる価値観が存在します。駐日ジョージア大使であるティムラズ・レジャバ氏の記事を元に、日本とジョージアの成功哲学の違いを探ってみましょう。
努力の国、日本
日本では、学校での成績向上、仕事での成果、スポーツでの勝利…あらゆる場面で努力が重視されます。成功者のストーリーは、たゆまぬ努力の賜物として語られることが多いですよね。私も日本で育ち、努力の大切さを学び、実践してきました。部活動に励み、勉強にも真剣に取り組んだ学生時代は、まさに努力の連続でした。
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努力という言葉がない?ジョージアの成功哲学
一方で、ジョージアでは「努力」という言葉がほとんど使われないそうです。それに相当するジョージア語「შრომა(シュロマ)」は、肉体労働や苦難をイメージさせる言葉で、日本の「努力」とはニュアンスが異なります。ジョージアでは、才能を活かし、好きなことを追求することが成功への近道だと考えられています。
ジョージアの成功者は、どのように評価されているのでしょうか?よく使われる表現は「あの人は昔から小賢しく立ち回っていた」というもの。日本では必ずしも肯定的な意味合いではない「世渡り上手」であることが、ジョージアでは高く評価されるのです。「うまく立ち回る(ჩალიჩი〔チャリチ〕)」能力は、ジョージア流の成功の秘訣と言えるでしょう。
ジェネラリストvsスペシャリスト
日本人は「ジェネラリスト」、ジョージア人は「スペシャリスト」という見方もできます。日本人は幅広い分野で高い基礎能力を備えていますが、ジョージア人は特定の分野に特化した才能を発揮する傾向があります。
たとえば、事務処理能力で比較すれば、日本人の緻密さ、正確さはジョージア人を圧倒するでしょう。日本人はどんな仕事にも真摯に取り組み、努力を惜しみません。一方、ジョージア人は興味のないことや利益につながらないことにはあまり力を入れません。
信仰心と成功
ジョージアでは、信仰心も成功に影響を与えているようです。4世紀にキリスト教を国教化したジョージアは、敬虔な国民が多い国です。スポーツ選手が十字を切ったり、十字架のネックレスにキスをする姿がよく見られます。神のご加護を信じ、運命を受け入れる姿勢も、ジョージア人の特徴と言えるでしょう。
ジョージア人の成功は、「才能」「立ち回りのうまさ」「神」という3つの要素が複雑に絡み合って生まれると言えるかもしれません。
2つの文化から学ぶ
日本で生まれ育った私は、日本的な「努力」の精神とジョージア的な「うまく立ち回る力」の両方を身につけることができたと考えています。2つの異なる文化に触れ、それぞれの成功哲学を理解することは、私にとって大きな財産です。