韓国の基幹産業である鉄鋼業が、未曾有の危機に直面しています。世界的な景気後退、中国による安値攻勢、そしてトランプ政権2期目の関税引き上げ懸念という三重苦が、この「産業の米」を苦境に追い込んでいます。世界第6位の鉄鋼生産国である韓国は、大規模な再編と減産を余儀なくされています。
世界的な需要低迷と中国の攻勢
専門家の予測によると、世界の鉄鋼需要は2023年にマイナス成長を記録し、2024年と2025年も1%台の低成長にとどまる見込みです。この需要低迷に加え、中国の安価な鉄鋼製品が世界市場に流入し、韓国鉄鋼メーカーは価格競争で苦戦を強いられています。韓国鉄鋼協会のキム・チョル수氏(仮名)は、「中国の過剰生産と輸出攻勢は、韓国鉄鋼業にとって大きな脅威となっている」と指摘しています。
alt韓国の浦項製鉄所の様子。鉄鋼業の低迷が見て取れる。
ポスコ、相次ぐ工場閉鎖と構造調整
韓国鉄鋼最大手のポスコは、業績悪化を受け、リストラを加速させています。7月には浦項第1製鋼工場を閉鎖したのに続き、11月19日には45年間稼働してきた浦項製鉄所第1線材工場の閉鎖を発表しました。さらに、中国で唯一保有する製鉄所「張家港浦項不銹鋼」の売却にも着手しています。これらの措置は、世界的な供給過剰、海外産の低価格鉄鋼の攻勢、そして設備の老朽化など、複合的な要因によるものとされています。
ポスコは赤字事業や非中核資産の売却・処分を進めるなど、厳しい構造調整を進めており、希望退職も募集しています。韓国経済研究所のパク・ミンジ氏(仮名)は、「ポスコの構造調整は、韓国鉄鋼業全体の縮小を象徴するものだ」と述べています。
現代製鉄も減産、労組との対立激化
業界2位の現代製鉄も、生産量削減のため「長期特別補修」を実施しています。唐津製鉄所は9月から3カ月間、仁川工場は2月から6カ月間の特別補修を行いました。さらに、浦項第2工場の閉鎖も検討していますが、労組の強い反発に遭っています。
alt韓国鉄鋼業の生産量推移を示すグラフ。減少傾向が鮮明になっている。
現代製鉄労組は、工場閉鎖による雇用への影響を懸念し、会社側との対立を深めています。韓国労働組合総連盟のイ・スンチョル氏(仮名)は、「鉄鋼業の危機は、労働者の雇用にも深刻な影響を与えるだろう」と警告しています。
韓国鉄鋼業は、厳しい経営環境の中で生き残りをかけた戦いを強いられています。今後の動向が注目されます。