韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領が、初訪米に先立ち日本を訪問するという異例の外交日程を選択しました。この動きは、国内支持層の反発を顧みず対日融和姿勢を示すもので、難航が予想される米国との交渉に日本との連携強化をつなげたいという戦略的な思惑が背景にあります。日韓関係の新たな局面と、東アジアにおける米韓日の協力体制への影響が注目されます。
「友人」関係を強調する李大統領の対日融和姿勢
李大統領は23日の首脳会談で石破茂首相に対し、「お会いするのが2度目なので、すごく親しい『友人』のように感じられますね」と笑顔を見せました。さらに、「ソウルでなく地方に来てほしい」と次回訪問を呼びかけ、個人的な関係を深める意欲を示しました。新大統領が同盟国である米国に先立ち日本を訪問するのは、国交正常化以降初めてのことです。李大統領は来日前の書面インタビューで、「シャトル外交を実践するため、外交の慣例に縛られず日本行きを決めた」と説明し、柔軟な外交姿勢を強調しました。
23日午後、首相官邸で行われた日韓首脳会談後の共同記者発表で握手する石破茂首相と李在明大統領。両国の関係強化を示す外交の一場面。
韓国国内の石破首相評価とシャトル外交の基盤固め
今月15日の全国戦没者追悼式の式辞で、13年ぶりに「反省」に言及した石破首相に対する韓国国内の評価は比較的高く、穏健派で韓国をよく知ると認識されています。ニュース専門局YTNは、石破首相が退陣の危機にあると報じつつ、今回の大統領訪日は「首相交代前にシャトル外交の基盤を固める」目的があったと解説しました。これは、日本の政局の変動にかかわらず、日韓間の対話チャネルを安定させたいという李大統領の意図を示唆しています。
米国への配慮と難航する対米交渉の思惑
李大統領の一連の言動からは、米国への意識も強くうかがえます。韓国紙の担当記者は、「革新系政権に代わっても東アジアの『チーム長』である日本との関係を維持することを示し、米国を安心させる狙いがある」と指摘しています。対米交渉を巡っては、趙顕(チョ・ヒョン)外相が訪日団への同行を急遽取りやめ、直接米国に向かったことも報じられました。通商交渉や在韓米軍の駐留経費負担を巡り、調整に問題が生じたとの見方も浮上しています。李大統領とトランプ米大統領の初の首脳会談を25日に控え、韓国大統領府関係者は、トランプ氏への対応について「石破首相が大統領に助言することもできる」と期待を寄せており、日本を介した対米戦略も視野に入れていることがうかがえます。
結論
李在明大統領の異例の訪日は、単なる慣例を破る行動以上の、多角的な外交戦略の一環です。日本との関係深化を通じて、国内支持層への説明責任を果たしつつ、来たるべき米国との交渉を有利に進めたいという強い意図が感じられます。日韓、そして日米韓の連携が、激動する東アジア情勢の中でどのような役割を果たすか、今後の動向が注目されます。