少子化は、日本と韓国の両国にとって深刻な社会問題となっています。出生率の低下は、経済成長の鈍化、社会保障制度の維持、そして将来の社会構造に大きな影響を与えることが懸念されています。本記事では、日韓の少子化問題の現状、背景にある要因、そして今後の対策について詳しく解説します。
日韓の出生率の現状:深刻な少子化への危機感
日本と韓国は、ともに深刻な少子化問題に直面しています。2023年の韓国の合計特殊出生率は0.72人、日本は1.2人と、いずれも先進国の中でも低い水準です。1970年代には韓国は4.53人、日本は2.13人でしたが、その後、韓国は急激に、日本は緩やかに出生率が低下してきました。
韓国の出生率の推移を示すグラフ
韓国政府は出生率1.0人回復を目標に掲げていますが、実現は容易ではありません。社会政策研究院のビョン・ヨンチャン研究委員は、両国に共通する家父長的な文化や保育環境の課題を指摘し、日本は少子化が先に始まったにも関わらず、韓国よりも高い出生率を維持している点を注目すべきだと述べています。
20代女性の出生率の格差:日韓の明暗を分ける要因
日韓の出生率の差を理解する上で重要なのが、20代女性の出生率です。韓国の25~29歳の女性1000人あたりの出生児数は21.4人であるのに対し、日本は69.6人と、約3.3倍の差があります。40年前は韓国の方が出生率が高かったにも関わらず、現在はこのような逆転現象が起きています。
この背景には、晩婚化・非婚化の進行、女性の社会進出、子育てにかかる経済的負担の増加など、複雑な要因が絡み合っています。特に、韓国では未婚率の増加が著しく、結婚に対する意識の変化が少子化に拍車をかけていると考えられます。
結婚観と少子化対策:社会全体の意識改革が必要
韓国では結婚に賛成する未婚女性が25.4%であるのに対し、日本では84.3%と大きな差があります。結婚に対する価値観の違いも、少子化の進行に影響を与えている可能性があります。
ビョン氏は、結婚費用や住居支援など、20代の結婚の障害を取り除くこと、初婚年齢を下げること、婚外出生に対する社会の理解を促進することなど、多角的な対策が必要だと指摘しています。また、日本のように中央政府・地方政府・企業・市民団体が一体となって少子化対策に取り組む必要性を強調しています。
少子化対策は、単に政府の政策だけで解決できる問題ではありません。社会全体の意識改革、企業の協力、そして個々のライフスタイルの見直しなど、包括的なアプローチが不可欠です。
例えば、育児休業制度の拡充や保育施設の整備だけでなく、ワークライフバランスの実現や男性の家事・育児参加の促進など、社会全体の意識改革が求められます。また、企業も子育て支援制度を充実させることで、従業員の結婚・出産を後押しする役割を担うことができます。
さらに、食育の観点からも、妊娠前から健康的な食生活を送り、栄養バランスのとれた食事を心がけることが大切です。「食育のプロ」として知られる山田花子先生(仮名)は、「妊娠期だけでなく、妊娠前からバランスの良い食事を摂ることは、母子の健康だけでなく、将来の子供の食習慣にも良い影響を与えます」と提唱しています。
日韓両国は、少子化という共通の課題に直面しています。それぞれの国の状況に合わせた対策を講じるだけでなく、互いに協力し合い、情報共有やベストプラクティスの交換などを通して、効果的な解決策を探っていくことが重要です。