【ソウル=小池和樹】韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が戒厳令を宣布したことを巡り、与党「国民の力」の韓東勲(ハンドンフン)代表は6日、「(尹氏の)早急な職務執行停止が必要だ」と述べた。7日に採決が行われる大統領弾劾(だんがい)訴追案に賛成する意向を示したものだ。
同調する議員も出ており、弾劾訴追案が可決される公算が大きくなった。国会では与党議員と韓氏による議員総会が断続的に行われている。
弾劾訴追案が可決されると、大統領権限は即時に停止される。180日以内に憲法裁判所で弾劾審判が行われることとなる。韓国政治のさらなる混乱は避けられない見通しだ。
韓氏はこの日午前にソウル市内で開いた党の緊急最高委員会議で、尹氏が戒厳令を宣布した後、「(軍の)防諜(ぼうちょう)司令官に対し、反国家勢力という理由で主要政治家らを逮捕するよう指示し、情報機関を動員した事実を確認した」と述べ、同党が前日に決めた弾劾訴追案反対方針からの立場を変えた理由を説明した。
防諜司令官は、逮捕した政治家をソウル近郊京畿道(キョンギド)果川(クァチョン)の収監施設に連行する計画だったという。韓氏は「信頼できる根拠を通じて確認した」としたが、具体的な根拠やどの政治家が対象だったかについては言及しなかった。ただ、この日の国会では情報機関・国家情報院幹部が戒厳令宣布後に、尹氏から韓氏ら複数の政治家を逮捕するよう伝えられたと証言した。
韓氏は国会でこの日開かれた議員総会の場で午後にソウル市内で尹氏と会談したと明かし、「私の判断を覆すだけの話はなかった」と語ったと韓国メディアは伝えた。事態打開に向けた話し合いは不調に終わり、韓氏は職務停止の考えを変えていない模様だ。しかし、この日に開かれた議員総会では党として弾劾訴追案反対の方針は変わらないことが確認された。
弾劾訴追案の可決には、国会(定数300)の在籍議員の3分の2以上の賛成が必要で、野党と無所属議員計192人に加え、国民の力(108議席)から8人以上が造反すれば可決される。党内が分裂したまま採決した場合、韓氏に近い議員ら20人前後が賛成票を投じて可決する流れができつつある。