韓国の中央選挙管理委員会は5日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の非常戒厳発動直後、約300人の戒厳軍兵士が京畿道の果川中央選管庁舎、水原選挙研修院、そしてソウル冠岳庁舎に出動したことを明らかにした。今回の非常戒厳事態で、国会以外に戒厳軍が出動した国家機関は選管だけだ。金竜顕(キム・ヨンヒョン)前国防長官は同日、メディアに送った見解文で、戒厳軍を選管に送った理由を「不正選挙疑惑関連捜査の必要性を判断するため」と述べた。ただし、選管は「情報流出などの被害はなかった」との見方を示した。
中央選管の金竜彬(キム・ヨンビン)事務総長は同日、国会行政安全委員会に出席し「3日夜10時24分に尹大統領が非常戒厳を宣布し、10時30分に戒厳軍約10人が中央選管庁舎内に投入された」「4日午前0時30分、戒厳軍約100人が追加で庁舎に投入された」と述べた。戒厳軍は夜間当直者ら5人の携帯電話を押収し、行動監視と出入りを規制したという。同日、中央選管庁舎には警察兵力約100人も投入された。趙志浩(チョ・ジホ)警察庁長は同日、「韓国軍防諜(ぼうちょう)司令官の電話を受け、選管に警察官を投入した」と述べた。
戒厳軍は、水原選挙研修院に約130人、ソウル冠岳庁舎にも約50人を出動させたという。 ただし、この2カ所では庁舎に進入しなかったとのことだ。選管に投入された戒厳軍は合計約300人で、国会内に入ってきた戒厳軍(280人)より多かった。
これについて、金竜彬事務総長は「戒厳軍がなぜ選管に進入したのかは正確には分からない。選管は戒厳法の対象にならないと思う」「戒厳が行われるからといって、選管業務を移管する必要はないと考える」と語った。
金竜顕前長官は戒厳軍に選管出動を指示した理由について「多くの国民が不正選挙疑惑を提起しているのを受け、今後の捜査の可否を判断するため、システムと施設の確保が必要だと判断した」と述べた。その上で「これを確保する過程で国会の戒厳解除要求決議があったので撤収した」と言った。保守派の一部で取り沙汰されている「選管不正選挙説」の真偽を確認するための措置だったという意味だ。これまで一部の保守団体やユーチューバーたちは今年4月10日の国会議員総選挙で不正選挙があったと主張し、選管の捜査を求めていた。
事実、戒厳軍は中央選管庁舍情報管理局事務室にも進入した。ここでは個人情報と選挙情報関連データサーバーが管理されているが、戒厳軍はここに進入しても特別な行動は取らなかったという。中央選管の金竜彬事務総長は、持ち出された物品があるかどうかについて「ない。軍が完全に撤収した後、電算・ログ記録を確認した時も被害はなかった」と答えた。韓国最大野党・共に民主党は「ユーチューバーたちの主張を確認するために戒厳令を宣布したのか」「深刻な憲政秩序に対する挑戦であり、このような大統領が大統領の座を維持することは、国を危険にさらすことだ」と主張した。
梁昇植(ヤン・スンシク)記者