サムスン電子が2025年の定期役員人事にて、半導体(DS)部門で100人以上もの役員を退職させるという、前例のない大規模な人事を断行しました。この動きは、韓国経済界に大きな波紋を広げており、今後のサムスン、そして韓国半導体業界の行方に注目が集まっています。今回は、この大規模退職の背景と、懸念される中国への技術流出問題について詳しく解説します。
サムスン半導体、大幅な役員縮小へ
サムスン電子は、半導体部門の役員数が飽和状態にあるとして、大幅な縮小を決定しました。約400人の役員のうち、100人以上が今回の役員人事で退職する見込みで、中にはメモリー事業部で長年活躍してきたベテラン役員も多数含まれているとされています。
altサムスン電子半導体工場内部の様子。高度な技術と設備が投入されている。
この大規模なリストラの背景には、サムスン半導体の業績不振があります。DS部門長のチョン・ヨンヒョン氏は、部署間のコミュニケーション不足、問題の隠蔽、非現実的な計画の報告といった組織的な問題点を指摘し、現状打破の必要性を訴えていました。経営陣は、肥大化した役員組織も、これらの問題の一因と捉えているようです。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる特需で業績が好調だった時期に、組織の効率化を怠り、過剰な昇進人事を繰り返したことが、現在の苦境を招いたとの見方も出ています。
50代・60代ベテラン役員の退職…中国企業への転職リスク
今回の役員人事での退職者は、50代・60代が中心と見られています。彼らは豊富な経験と高度な技術を持つベテランであり、転職市場での需要が高いと考えられます。しかし、同時に懸念されているのが、中国企業への技術流出です。
近年、高額な報酬を提示する中国企業に、韓国の半導体エンジニアが転職するケースが増加しています。今回、多数のベテラン役員が転職市場に出ることで、この流れが加速する可能性が懸念されています。
技術流出の深刻な事例も
実際、サムスン電子やSKハイニックスの元役員が、機密技術を中国企業に流出させた容疑で逮捕される事件も発生しています。流出した技術の経済的価値は、4兆3000億ウォン(約4600億円)以上と推定されており、技術流出の深刻さを物語っています。
韓国半導体産業協会のアン・ギヒョン専務は、政府や協会レベルで国内の人材流出を防ぐ努力をしているとしながらも、高額な報酬を提示する中国企業に対抗するのは難しいと語っています。
韓国半導体産業の未来は?
今回のサムスン電子の大幅な役員退職は、韓国半導体産業にとって大きな転換点となる可能性があります。国内での雇用維持、技術流出防止、そして競争力の維持という課題に、韓国政府と企業はどのように対応していくのでしょうか。今後の動向に注目が集まります。
altサムスン電子の半導体工場。競争力維持のため、更なる技術革新が求められている。