世界は大きな転換期を迎えている。中国、北朝鮮、ロシアといった国々の指導者たちは、一体どのような未来図を描いているのだろうか。それは、習近平国家主席がプーチン大統領に語った「100年ぶりの大転換」という概念に集約される。アヘン戦争以降、19世紀、20世紀と世界を牽引してきた欧米中心の国際秩序が衰退していくという見立てこそ、彼らの行動原理となっている。
西側衰退論の根拠
プーチン大統領がウクライナ侵攻というロシア帝国再建プロジェクトに踏み切れたのも、この「西側の衰退」を確信していたからこそと言えるだろう。北朝鮮の金正恩総書記も、プーチン大統領と蜜月関係を築き、労働新聞では「米国覇権衰退論」を連日報じている。彼もまた、この見立てに共感していなければ、ここまで積極的にプーチン大統領と歩調を合わせることはなかっただろう。
経済的側面からの考察
歴史を振り返ると、「西側衰退論」は度々登場してきた。第一次世界大戦後のシュペングラーの「西洋の没落」、太平洋戦争時の日本の京都学派による「西洋自由主義の破滅」など、いずれも希望的観測に基づいた側面が強かった。しかし、現在の「欧米圏衰退論」は、過去のそれらとは異なる様相を呈している。
欧米圏の衰退を示唆するグラフ
1991年当時、世界経済の大部分を欧米圏と日本が占めていたが、現在では中国の経済規模がEUに匹敵するまでに成長している。購買力平価で計算すれば、欧米圏の相対的な地位低下はさらに顕著だ。G7のGDPは2003年には世界全体の43%を占めていたが、現在は30%にまで低下している。欧米圏は依然として重要な資本蓄積の中心地ではあるものの、かつてのような絶対的な地位は失われつつある。
政治的側面からの考察
1991年当時、北朝鮮の崩壊と中国の民主化は時間の問題だと考えられていた。しかし、現実は全く異なる。中国は民主化どころか、経済競争で米国を脅かす存在となり、北朝鮮のミサイル開発も進んでいる。
金正恩とプーチンの会談
西側諸国では、トランプ前大統領のように孤立主義を掲げる政治家が台頭し、強力な国家を求める声が高まっている。気候変動など複合的な危機に直面する資本主義体制において、行政国家の役割が改めて注目されている。一部のヨーロッパ諸国でさえ、中国の党国家体制を参考にしようとする動きがあるのは、驚くべきことではないかもしれない。
世界秩序大変革期における日本の役割
経済学者である佐藤健太郎氏(仮名)は、「米国の相対的な衰退は避けられない」と指摘する。「ドル基軸通貨体制や米軍の海外基地網は当面維持されるだろうが、長期的な傾向は変わらない」と述べている。
習近平国家主席やプーチン大統領は、西側の衰退を自国の利益に利用しようと目論んでいる。彼らが描く「西側の漸次的衰退」という未来図は、ある程度客観的な現実を反映していると言える。この現実は、日本にとっても大きな意味を持つ。貿易国家である日本にとって、開かれた国際秩序の維持は重要だが、米国一極集中時代は終わりつつある。
日本は自ら行動を起こし、望ましい国際秩序の構築に貢献していく必要がある。気候変動問題への対応も喫緊の課題だ。新しい時代に対応した生産と消費のモデルを構築し、持続可能な社会を実現していくことが求められる。