マルチ商法、それは甘い言葉で夢を見せ、人生を狂わせる危険な罠。大切な家族や友人を巻き込み、金銭トラブルや人間関係の崩壊を引き起こす可能性もある社会問題です。この記事では、元社員の証言を元に、マルチ商法企業がどのように人々を勧誘し、洗脳していくのか、その巧妙な手口を明らかにします。
マルチ商法企業の手口:理念に隠された罠
元社員の関口誠さん(仮名)は、A社というマルチ商法企業で健康商材を販売していました。入社のきっかけは「世の中から病を少なくしたい」というA社の理念への共感でした。しかし、A社のビジネスモデルは、未公開株を購入した株主が親族や友人を勧誘していくというマルチ商法でした。A社は「ガンを副作用なく治す」という謳い文句で、健康不安を抱える高齢者を中心に、数千万円を投資する大口株主も含め、2~3万人もの顧客を獲得していました。
マルチ商法の勧誘資料
健康セミナー:巧妙な勧誘の場
A社は全国各地で健康セミナーを開催し、未公開株の購入者を募っていました。セミナーの受付では、紹介者の確認が必須でした。紹介料システムがマルチ商法の原動力の一つとなっているのです。
搾取構造:リーダーと取締役による支配
A社は株主をグループ分けし、古参株主である「リーダー」が勧誘活動を指導、取締役がグループを統括するシステムを構築。株の販売額の10%がリーダーに、30%が取締役に支払われる仕組みで、一部のリーダーは月に1000万円以上を稼いでいたといいます。まさに、リーダーと取締役による搾取構造と言えるでしょう。
巧妙な勧誘方法:スポーツ教室や料理教室を利用
関口さんは、以前子どもたちにサッカーを教えていた経験から、会社にシニア向けスポーツ教室の開催を指示されました。A社は料理教室やお茶会なども開催し、高齢者を集めては健康セミナーへ勧誘していました。社長の著書や会社案内のDVDを無料で配布し、セミナーへの参加を促すことで、義理を感じた高齢者がセミナーに参加していたのです。
マルチ商法の勧誘の様子
感情に訴える洗脳:社長の悲劇を利用
セミナーでは、社長が自身の悲劇的な過去を語り、医療への熱い思いを訴えるのが常套手段でした。心臓病で亡くなった弟、白血病で亡くなった娘、子宮ガンを患った妻、くも膜下出血で倒れた父…悲しげなBGMと共に語られる社長の物語は、参加者の感情を揺さぶり、A社への共感を高める効果がありました。 食品安全のプロフェッショナルである山田健二氏(仮名)は、「このような感情に訴えかける手法は、特に高齢者にとって非常に効果的であり、冷静な判断力を失わせる危険性がある」と警鐘を鳴らしています。
まとめ:マルチ商法の危険性
この記事では、元社員の証言を元にマルチ商法の巧妙な勧誘と洗脳の実態を明らかにしました。理念に隠された罠、巧妙な勧誘方法、そして感情に訴えかける洗脳…マルチ商法は、私たちの身近に潜む危険な存在です。大切な家族や友人、そして自分自身を守るために、マルチ商法の手口を理解し、冷静な判断力を保つことが重要です。