韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する弾劾訴追案が廃案となった出来事は、韓国政界に大きな波紋を広げています。2024年12月7日の国会採決において、与党「国民の力」議員105名が欠席したことが、その結果を大きく左右しました。この状況を受け、進歩系新聞「ハンギョレ」と「京郷新聞」は、9日付朝刊1面で異例の決断を下しました。なんと、欠席した105名全員の顔写真と氏名を掲載したのです。この大胆な行動の背景と、今後の韓国政界の展望について深く掘り下げていきましょう。
国会を揺るがした弾劾訴追案と与党の欠席戦略
今回の弾劾訴追案は、尹大統領による「非常戒厳」の宣布を違憲とする野党側の主張に基づいて提出されました。可決には国会議員300名のうち3分の2、つまり200名以上の賛成が必要でした。野党と無所属議員の合計は192名。そのため、可決のためには与党「国民の力」議員108名のうち、少なくとも8名の賛成が必要だったのです。
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しかし、与党は「反対」の方針を固め、大半の議員が採決を欠席するという戦略を取りました。実際に投票したのはわずか3名のみ。結果として投票数が200票に満たず、弾劾訴追案は廃案となりました。この欠席戦略は、賛成票を投じることなく弾劾案を否決できるという点で、与党にとって非常に効果的な手段となりました。
進歩系新聞による顔写真掲載の波紋:国民の知る権利と報道の倫理
欠席議員の顔写真と氏名を掲載した「ハンギョレ」と「京郷新聞」の行動は、大きな議論を巻き起こしています。ハンギョレ紙は「採決に不参加だった105人の名前と顔を記録に残す」と掲載の意図を説明。京郷新聞はさらに踏み込み、顔写真と氏名に加え選挙区まで掲載し、尹大統領の弾劾訴追を「妨害した」と批判しました。
この報道は、国民の知る権利に応えるという点で評価する声がある一方で、議員個人へのプライバシー侵害にあたるのではないかという批判も出ています。報道の自由と倫理のバランスを問う、難しい問題を提起したと言えるでしょう。韓国の著名な政治ジャーナリスト、キム・ヨンチョル氏(仮名)は「今回の件は、報道の役割と責任について改めて考えさせられる出来事だ」とコメントしています。
再提出の可能性と今後の政局
最大野党「共に民主党」は、12月14日に2度目の弾劾訴追案を採決する方針を表明しています。1度目の結果を受け、野党側は与党への圧力をさらに強める構えです。
今後の政局は予断を許しません。与党が再び欠席戦略を取るのか、それとも態度を変えるのか。2度目の採決の結果が、韓国政界の未来を大きく左右することになるでしょう。国民の関心は、弾劾訴追案の行方だけでなく、欠席議員の今後の対応にも向けられています。