2024年12月8日、シリアの反体制派が首都ダマスカスを制圧し、アサド政権が崩壊した。「50年にわたるアサド家の支配の終焉は、この地域のパワーバランスを再構築するだろう」と英「BBC」は予測する。アサド政権と同盟関係にあったロシアのメディアによると、アサドはすでに大統領を辞任し、国を脱出したという。仏メディア「クーリエ・アンテルナショナル」が、近隣諸国の反応をまとめた。
イスラエル「イランにとどめを刺すチャンス」
「ハアレツ」紙をはじめとするイスラエルの多くのメディアは、「アサド政権の崩壊は何よりも道徳的な勝利」などと伝え、政権崩壊を歓迎した。
アサド政権はこれまで、イランと関係が深い「ハマス」やレバノンの「ヒズボラ」、イラクのシーア派民兵組織、イエメンの「フーシ派」などが含まれるネットワーク「抵抗の枢軸」の柱であり、イランとレバノンを結ぶ橋の役割をしてきた。ヒズボラの指導者ハッサン・ナスララが9月末に暗殺されたいま、イスラエルの大統領ベンヤミン・ネタニヤフは「おそらくこれらの出来事がイランにとどめを刺すチャンスだと見ているだろう」とハアレツの記者は伝える。「ネタニヤフは何ヵ月も前から、イランに直接攻撃し、核開発計画を解体するよう米政府に訴えてきた」
一方で、シリアのスンニ派イスラム主義勢力の台頭や、1967年以降イスラエルが占領しているゴラン高原の奪取を危惧する報道も見られる。イスラエルはシリア反体制派の侵入に備え、ゴラン高原の緩衝地帯に部隊を配備したと発表した。また、イスラエルは反体制派が旧シリア政権の化学兵器を奪わないよう化学兵器工場を攻撃したとも報じられている。
トルコ「シリアのクルドと戦うときが来た」
シリアからの難民を300万~500万人受け入れてきたトルコもまた、アサド政権の崩壊を受け、祝賀ムードに包まれた。イスタンブールの街頭や聖ソフィア大聖堂も、独裁政権の終焉を祝う人で溢れ、ハカン・フィダン外相は「何百万ものシリア人が国に帰れるだろう。我々はそれに向けて動きはじめた」と表明している。
だが、これでシリアでの戦闘が終わるわけではない。反体制派とアサド政権軍との戦いはシリア全土で停止しているが、トルコ・シリアの国境地域を支配するクルド人勢力とトルコ主導の軍との戦闘は激化している。トルコの当面の狙いは、シリア北部の街マンビジの占領だとされる。
COURRiER Japon