シリア内戦の行方を大きく左右するイスラム組織「シャーム解放機構」(HTS)が、首都ダマスカスを「解放」したと宣言。アサド政権崩壊の可能性が高まり、国際社会の注目が集まっています。HTSとは一体どのような組織なのか、そしてシリアの未来はどうなるのか、詳しく解説します。
HTSとは? アルカイダ系から変貌を遂げた組織
HTSは、かつて国際テロ組織アルカイダ系の「ヌスラ戦線」として知られたイスラム過激派組織を前身としています。2011年のシリア内戦勃発以降、反体制派の主力として勢力を拡大し、3万人規模の戦闘員を擁するとも言われています。2016年にはアルカイダからの離脱を宣言しましたが、米国などからは依然としてテロ組織に指定されています。
シリアの首都ダマスカスで演説するHTSの指導者ジャウラニ氏
HTSは当初、イスラム法に基づく厳格な統治を主張し、少数派への弾圧などで国際的な批判を浴びていました。しかし、近年ではその姿勢を軟化させ、他の勢力との連携も視野に入れた政治的な動きを見せています。
ダマスカス「解放」宣言の背景と今後の展望
2020年3月、イドリブ県での停戦合意以降、シリア内戦は膠着状態にありました。しかし、2024年11月下旬からHTS主導の反体制派が攻勢を強め、主要都市を次々と制圧。ついに12月8日、ダマスカス「解放」を宣言するに至りました。
HTS指導者のジャウラニ氏は、アサド政権打倒を目的とした蜂起であると強調しつつも、「アサド後」の統治体制については、単独ではなく各勢力との協調を模索する姿勢を見せています。
ジャウラニ氏とは何者か?その経歴と戦略
サウジアラビア生まれのジャウラニ氏は、イラク戦争でアルカイダ系組織の戦闘員として米軍と戦った経験を持ちます。シリア内戦勃発後、ヌスラ戦線の指導者として祖国に戻り、反体制運動を率いてきました。20年の停戦以降は戦闘部門の強化に注力し、今回の攻勢につながったとされています。
アサド大統領邸宅でアサド政権崩壊を祝う反体制派戦闘員
シリアの未来は? 混乱と再建への道のり
HTSによるダマスカス「解放」宣言は、シリア内戦の新たな局面を意味します。アサド政権の崩壊は時間の問題と見られますが、今後のシリアは、HTSを含む様々な勢力による権力闘争の舞台となる可能性も高く、混乱の長期化が懸念されます。国際社会は、人道支援と和平プロセスへの積極的な関与が求められています。
まとめ:混沌とするシリア情勢、注視が必要
HTSによるダマスカス「解放」宣言は、シリア内戦の大きな転換点となる出来事です。アサド政権の崩壊、そしてHTSの今後の動向は、シリアだけでなく中東全体の安定に大きな影響を与える可能性があります。今後のシリア情勢から目が離せません。