【ワシントン=黒瀬悦成】11月3日実施の米大統領選まで2週間となった20日、共和党のトランプ大統領はFOXニュースの番組に出演し、米紙が先に報じた民主党候補のバイデン前副大統領と息子をめぐる疑惑に関し、バー司法長官に捜査を開始するよう求めると表明した。下院では共和党議員らが疑惑捜査に向けた特別検察官の任命をバー氏に求める一方、情報特別委員会のシフ委員長(民主党)は疑惑を「ロシアによる偽情報工作」と断じるなど、大統領選の投開票日を前に両党のせめぎ合いが激しさを増している。
トランプ氏は番組で「司法長官は迅速に行動する必要がある。誰かを(特別検察官に)任命すべきだ」と述べた。同氏はまた「これは大規模な汚職だ。投票日までに解明されなくてはならない」と強調した。
米紙ニューヨーク・ポストの報道によると、バイデン氏の次男のハンター氏は2015年、当時副大統領だった父親を、汚職疑惑のあったウクライナの天然ガス会社「ブリスマ」の役員に紹介。このことを示す電子メールが、ハンター氏のノートパソコンから見つかったとされる。
FOXニュースはこれに加え、ハンター氏と父親が中国のエネルギー企業から取引をめぐる見返り報酬を得る取り決めがあったことを示唆する同氏のメールを入手したとしている。
ポスト紙の報道を受け、共和党の下院議員11人は「偏向のない、独立した特別検察官」の任命をバー長官に要求。上院国土安全保障委員会のジョンソン委員長も、一連の報道の真偽を見極めつつ、調査を始める意向を明らかにした。
また、米情報機関を統括するラットクリフ国家情報長官は19日、シフ下院情報特別委員長ら民主党勢力が疑惑を「ロシアの偽情報工作」と主張していることに関し、「ロシアの工作であることを裏付ける証拠はない」と全面否定した。
一方、米メディアによると共和党主導の上院司法委員会は、ツイッターなどのソーシャルメディアが同紙の報道を拡散するのを制限する措置をとったことに対し、ツイッターのドーシー最高経営責任者(CEO)に加え、フェイスブックのザッカーバーグCEOを召喚する方針を固めた。
一連の疑惑に関し、バイデン氏および陣営は「中傷攻撃だ」として黙殺する構えであるほか、社説でバイデン氏支持を表明した米主要各紙は抑制的な報道を維持している。