韓国の政情不安が深刻化し、電子・半導体業界、特にサムスン電子への懸念が高まっている。TSMC創業者のモリス・チャン氏もサムスンの現状に懸念を示しており、技術的問題に加え、政治的混乱が同社の競争力に悪影響を及ぼすと予測している。
政治的混乱とウォン安:サムスン電子の苦悩
不安定な政治状況はウォン安を招き、一見輸出企業には有利に見える。しかし、グローバルに生産拠点を展開するサムスン電子にとっては、コスト計算が複雑化し、単純なメリットとは言えない状況だ。
ドル高:メリットとデメリットの狭間で
かつてはドル高は韓国の半導体メーカーにとって朗報だった。国内生産・ドル建て輸出という構造上、ドル高はウォン換算での利益増加に直結したからだ。しかし、米国への大規模投資を進める現在、ドル高は建設費や人件費の上昇を意味する。テキサス州の工場建設に巨額投資を行うサムスン電子にとって、為替変動リスクは無視できない。SKハイニックスも同様の課題に直面している。固定契約によるリスクヘッジも、長期的な不確実性の中では限界がある。大手企業の財務担当者も、為替変動幅の拡大を最大の懸念材料として挙げている。
サムスン電子の工場
ギャラクシーS25:値上げは避けられないか?
ウォン安に加え、TSMCによるチップ生産価格の引き上げもサムスン電子を苦境に立たせている。スマートフォン頭脳であるプロセッサチップは、原価に占める割合が大きく、コスト上昇の影響を受けやすい。業界関係者は、ギャラクシーS25シリーズの国内出庫価格が15万ウォン程度値上げされる可能性が高いと予測する。海外市場の平均販売価格が国内より低いことも、国内価格調整の必要性を高めている。
チップ調達コストの上昇:価格転嫁のジレンマ
クアルコム製チップの調達コスト上昇は、ギャラクシーS25シリーズの価格設定に大きな影響を与えている。収益性を維持するために価格転嫁は避けられないが、消費者離れのリスクも考慮しなければならない。サムスン電子は難しい舵取りを迫られている。
ギャラクシーS24シリーズ
韓国経済の行方とサムスン電子の未来
韓国経済の不安定化は、サムスン電子にとって大きな試練となっている。為替変動、チップ調達コストの上昇、そして政情不安。これらの課題を乗り越え、持続的な成長を遂げることができるのか。今後の動向に注目が集まっている。